y=f(x)といった関数があったとします。
微分の書き方として、
- y’
- f'(x)
- \(\displaystyle \frac{dy}{dx} \)
- \(\displaystyle \frac{df}{dx} \)
- \(\displaystyle \frac{d}{dx}f(x) \)
などがあります。
意味はどれも同じです。
物理などでは、上に点をつける\(\displaystyle \dot{y}\)記法もよく使われます。
大きく、ダッシュ(プライムともいう)をつける記号と、
dy、dxのように変数の前にdをつけて分数形式で表す方法に分けられます。
ダッシュを使う方法は、略式です。
これは、yがxの関数であることを前提とした略記号です。
例えば、y=ax^2+bx+cといった関数があった場合、
y’=2ax+b
となります。
つまり、暗にxで微分してるわけです。
この関数yをaの関数と見立てた場合は、
y’=x^2となります。
y’だけだと、どの変数で微分したのかわからなくなりますが、
文字数が節約できるので、この記号はよく使われています。
一方
dy/dxの記号は、xで微分していることが明示されています。
もし、yをaで微分した場合は、dy/daという記号を使います。
先程の例でいくと、
dy/dx=2ax+b
dy/da=x^2
です。
さて、dy/dxについてですが、これは分母がdxで分子がdyの分数と同じ形をしています。
しかし、(少なくとも高等)学校では、これは分数ではないと習います。
したがって読み方も、
分数のように「ディーエックス分のディーワイ」のようには読みません。
頭の中では、「yの微分」と読んでいた方がよいのですが、
発音するときは、「ディーワイディーエックス」と読みます。
結論からいいますと、dy/dx
は分数ではありません。
なぜなら、もし分数とするなら、
dxやdyの定義が必要になります。
しかし、dx、dyの定義は(少なくとも高校教科書には)どこにも書かれていません。
しかし、実はこれ分数です。
比をとっているという意味で。
分母dxと分子dyの定義がないので口にはだしませんが、
(少なくとも私は)頭の中でdy/dxは分数として考えておくとわかりやすくなります。
もちろん、普通の分数とは区別して考えます。
どうしてこれが分数とみなせるのかといいますと、
dy/dxは無限小と無限小の比(つまり分数)だからです。
極限の不定形で0/0といった記号を目にすることがあると思いますが、
このゼロ同士の0/0の0っていうのは、通常使っている0(ゼロ)とは違う意味で使っていますよね。
一般的に無限小は数とはみなされませんが、あたかも数のように取り扱うことがあります。
無限小の意味を込めて0という記号を使う場合もよくあります。
無限小は数のような演算が定義されていないのですが、
ある程度は数のように振る舞います。
そして、比(割り算)が決められる場合があります。
これをうまいこと数ではないけど、数のように取り扱おうとして発明されたのが、
dxとかdyというdを頭につけた記号です。
無限小の0でなく、もう少し発展させた記号がdxやdyであって
dy/dxも(極限の比としての意味をもつ)記号として使えるのです。
数学上、ゼロで割ることはできないので、
分数の分母にゼロがくることは許されていません。
しかし、極限の計算においては、
0/0ができてしまう場合があるのです。
先程、dxやdyは定義できないと書きましたが、
むりやり書くことはできます。
(もちろん数学的な定義のように使い回せるものではありません)
\( \displaystyle dy=\lim_{h→0} ((f(x+h)-f(x)) \)
\( \displaystyle dx=\lim_{h→0} ((x+h)-x)=\lim_{h→0} h \)
です。
こう書いてしまうと、
(fが連続の場合)
dy=0
dx=0
と書いているのと同じになってしまい定義しているとはいえないのですが、
極限の問題を解く時に出没する0/0の0をdyやdxと表しているのだと考えます。
ここで、注意点があります。
dyはxに関連づいているという点です。
y=f(x)というyとxを結びつける関係式があってこそ
dyの意味ができるということです。
つまり、dxとdyは区別されます。
\( \displaystyle dy=\lim_{h→0} ((y+h)-y) \)
と書かずに
\( \displaystyle dy=\lim_{h→0} ((f(x+h)-f(x)) \)
と書いたのはこの注意点があったためです。
つまり、dyはxの関数であって、dxの制約をうけています。
dy/dxの定義は、
\( \displaystyle \frac{dy}{dx} = \lim_{h→0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \)
ですが、これを
\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{ \displaystyle \lim_{h→0} {f(x+h)-f(x)} } {\displaystyle \lim_{h→0}{h} } \)
と定義式を変更して書くわけには行きません。
なぜなら、右辺の式は分母が0で数として(分数として)意味をなさない式だからです。
なお、dy/dxを分母・分子に分解した量と考えることで、
(dy)^2/(dx)^2などといった量(比)も形式的には考えることができますが、
実際のところあまり使われていません。
その理由は詳しくはわかりませんが、あまり応用がないからでしょうか。
長々と書きましたが、
まとめると、dyやdxは、いわゆる無限小です。
無限小という数は通常定義されていないし、
収束という概念で解析学は構築されているため、
dy/dxを単なる微分のとしてしか使わないこととして習いますが、
式を眺めるときには、無限小と思って解釈するとよくわかるようになります。
ちなみに、積分の記号で最後にdxなんてものがついていますが、
このdxも微分にでてくるdxと同じものだと思うと
積分の式の意味も読みやすくなります。
積分式の例
\( \displaystyle \int_0^1 \sqrt{1-x^2} dx\)
ただ、2回微分したりすることはよくあるので、
d^2y/dx^2といった記号もあります。
ちなみに、2回微分した関数を2階微分といいます。
dの指数部分にある2は掛け算を繰り返す2乗(指数)ではなく、
2回微分を繰り返すという意味で使われています。
さすがに、d^2などというのは、2乗ではあっても掛け算ではないので、
2回という意味は残っていながら
分数のような取り扱いはできないのです。
なれるまでは高校でならったように、
y’と書くところ、微分している変数を明示したい場合にdy/dxと書いているんだと考えたほうが無難です。