複素数を計算できる人でも、複素数をきちんと定義できるかどうかは怪しいものです。

数を定義するというのは、簡単なようで意外に難しいのです。

世の中、いろんなところで数を使っていますが、数自体を定義できる人はごく一部です。

語学と同じです。文法を知らなくても、文章を作ることはできます。

数の定義を知らなくても数を使うことはできるのです。

複素数の定義の一つに虚数を使ったモノがありますが、虚数とは一体なんなのでしょうか?

 

複素数の定義

 

複素数は高校で習いますが、どのように習うでしょうか?

まずは、二次方程式を習い、
実数解をもたない二次方程式があることを知った段階で、
複素数の存在を感じます。

そして、虚数単位(一般にiで表される数)というものを学びます。

虚数単位、名前はどうでもいいですが、これは二乗すると-1になる数です。

そして、複素数の登場です。

高校では、複素数の定義をさらっと行い、複素数の計算方法を学びます。

普通の文字式の計算に慣れていれば、特に難しい部分はありません。

文字式の計算がうまくいくのですから、複素数でおかしな事などみつかるはずがありません。

もし複素数の計算が矛盾を含んだ計算方法であったなら、その矛盾は文字式の計算でも発生しているはずです。

 

ただ、複素数の計算が、文字式の計算と異なっている、「iは2乗すると-1になる」という約束が追加されていることです。

複素数と文字式の番は、この点だけです。

 

ですから、文字式の計算がばっちりできていれば、複素数の計算はらくらくにできてしまいます。

 

実際、複素数は文字式の計算に虚数単位iを追加した数として定義できます。

定義をきっちり記述しようとすると、かなり面倒ではあるのですが、文字式(多項式)の計算が当たり前にできる世界では、複素数はごく自然な数です。

 

複素数は、すでに完成された数です。

 

まとめとして、複素数の定義の核心を書くと「虚数単位iを追加した文字式」となります。

 

 

2乗して-4になる数を追加した数

それでは、虚数単位iではなく、二乗したら-4になる数を追加したらどうなるでしょうか?

ここでは、その2乗したら-4になる数を文字jで表すことにします。

\(i^2=-1\)に対して、\(j^2=-4\)です。

jを含んだ式を文字式のようにして計算します、。ただし、\(j^2\)がでてきたら、-4に置き換えます。

虚数単位iを追加したやりかたで、虚数もどきjを追加した数です。

このように実数にjを追加した数全体も数と使えます。

iを追加してできた数を複素数と呼ぶのに対して、
jを追加してできた数を「複素数もどき」と呼ぶことにします。

実は、複素数と複素数もどきはある意味同じものになります。

計算方法は違いますが、一対一の対応によって、同じ構造をもつ数であることがわかるのです。

つまり、実数に2乗して-1になる数を追加しても、2乗して-4になる数を追加しても、その全体は同じ性質をもった数であるということです。

実際、jとiは、「j=2i」の関係で結ばれています。

2iを2乗すると-4になるので、j=2iと定義した数と同じ数となっています。

逆に、i=j/2です。

複素数と複素数もどきは同型(同形)と呼ばれます。

みかけは違うけれど、同じ構造を持っているということです。

記号(表記)が違っているというだけです。

 

それでは、もっと発展させて、2乗したら-2になる数を実数に追加したらどうなるでしょうか?

これも、jを追加したときと同じように、複素数に同型な数ができます。

 

2乗したら1になる数を実数に追加したら?

ちなみに、2乗したら1になる数は実数の中にすでにあります。

それは、1と-1です。

この二つの数は実数で、2乗したら1になります。

普通は、実数に実数を加えた数を追加しても、実数にしかなりません。

しかし、そこをゴリ押しし、2乗したら1になる数k(k≠1,-1とします)というのを考え、
kを使った式を文字式のように計算し、kの2乗がでてきたら1に置き換える数を考えてみます。

たとえば、1+2kと、5-3kという数を考え、

(1+2k)+(5-3k)=6-k

といった計算を行い、\(k^2\)がでてきたら1に置き換えます。

 

こんどは、(1+2k)と、(5-3k)という数をかけてみると、

\((1+2k)(5-3k)=5-3k+10k-6k^2\)
\(=5+7k-6 \dot 1\)
\(=-1+7k\)

と計算できます。

できたかのように見えますが、

次の例を考えてみてください。

\((1+k)(1-k)=1-k^2=0\)

なんと、(1+k)と(1-k)をかけたら0になってしまいます。

これは、数としてまずいです。

いま、k≠1,-1で考えていますから、

1+k≠0、1-k≠0です。

0でないもの同士をかけて0になる。

このような数も考えることはできますが、普通私たちが使っている数とは違った体系の数になります。

0以外の0因子を持つ数は、実数や複素数とは違った性質を持つ数です。

こういった数は、例えば、ab=0という式があったとき、a=0またはb=0といった論理展開が使えませんから、実数とは同じような論理展開ができません。

どうして、このような0因子を持つようになったのか、さかのぼって考えると、もともと実数の中に2乗して1になる数があったからです。

数を追加するときには、もともとの実数に存在しない数としないと、へんてこな数ができてしまうということです。

 

虚数単位iが虚といわれる理由

iが虚数といわれる所以は、ここにあります。

実数でない数(虚数単位i)を追加して複素数を作りました。

実数でない数iを追加したので、実際でない数、虚しい数、を追加したと言えます。

 

実数でないという意味ですね、虚数は。

虚数は、「存在しない数」という意味で使っているわけではないです。

少しニュアンスが違います。

虚数は「実数でない数」の事だということです。