因数分解の公式はよく教科書にわかりやすく載っていますが、複素数をつかった因数分解の公式はあまり載っていません。

最も簡単な例は、\(\displaystyle a^2+b^2\)の因数分解です。

 

3乗多項式の展開と因数分解公式

複素数の因数分解を始める前にまず普通によく使う公式のを確認しておきます。

3乗の和や差は因数分解できます。

\(\displaystyle a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)\)

\(\displaystyle a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)\)

プラスやマイナスの符号がどこについているのかよく注目しましょう。

 

 

3乗の展開公式を逆にみた因数分解の公式もあります。

\(\displaystyle a^3+3a^2b+3ab^2+b^3=(a+b)^3\)

\(\displaystyle a^3-3a^2b+3ab^2-b^3=(a-b)^3\)

長い式ですが、よくみると、実は対称的になっていて規則的な項の集まりになっています。

 

でもこの展開公式からの因数分解も最初の因数分解の公式を使って因数分解できます。

 

\(\displaystyle a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)

この式の因数分解も、最初に示した因数分解の公式を使って因数分解できます。

 

 

\(\displaystyle a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)
\(\displaystyle =(a^3+b^3)+(3a^2b+3ab^2)\)
\(\displaystyle =(a+b)(a^2-ab+b^2)+3ab(a+b)\)
\(\displaystyle =(a+b)(a^2-ab+b^2+3ab)\)

\(\displaystyle =(a+b)(a^2+2ab+b^2)\)
\(\displaystyle =(a+b)(a+b)^2\)

\(\displaystyle =(a+b)^3\)

 

こんな感じ。

 

 

2乗多項式の展開と因数分解公式は虚数も使う

2乗の多項式の公式は以下のようになります。

\(\displaystyle a^2-b^2=(a+b)(a-b)\)

\(\displaystyle a^2+2ab+b^2=(a+b)^2\)

\(\displaystyle a^2-2ab+b^2=(a-b)^2\)

 

この公式はよく教科書に載っています。

 

ここで、\(\displaystyle a^2+b^2\)が公式としてないですが、これは因数分解できないからあまり載っていないのです。

 

しかし、実は、

\(\displaystyle a^2+b^2=(a+bi)(a-bi)\)

と虚数を使うと因数分解できます。

 

複素数をつかった因数分解

\(\displaystyle a^2+b^2\) の例でしめしたように、 複素数を使うと因数分解できることがあります。

もっとも、複素数の範囲での因数分解は2次の場合でよくつかわれます。

 

それはなぜかというと、高次(3次、4次、・・・)になると、なかなか因数を見つけるのが困難だからです。

そうはいっても、それを応用すると

実は、最初に例題でつかった \(\displaystyle a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)\) は、

複素数の範囲でさらに因数分解できます。

 

\(\displaystyle a^3+b^3=(a+b)(a+\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}b)(a+\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}b)\)

となります。

 

ちょっと長くて因数分解できれないみたいですが、

\(\displaystyle w=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\)

とおくと、上記の公式は、

\(\displaystyle a^3+b^3=(a+b)(a+wb)(a+w^2b)\)

と書き直すことができます。

 

ちなみに、\(\displaystyle w^3=1\)となっています。