無限級数の和の意味でよくある勘違い
勘違いを示す前に、無限級数についての定義を書いておきます。
無限級数とは
無限級数とは、数列{an}が与えられた時に、これを順に+で結んだ式
\[\displaystyle a_1+a_2+a_3+…+a_n+…\]
のことです。
無限級数を
\[\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_n\]
と表します。
とく使われてる記号ですから自然に受け入れられる定義です。
しかし、よく使われている記号であるから、これは、数列の項すべてを足し合わせた総和であると勘違いしてしまうのです。
たしかに、数列の項すべての総和の意味は込められていますが、定義では単純に+で結んだ式であって、無数の項をもっている数列の項すべてを足し合わせたわけではありません。
ですから、例えば、
1+2+3+…+n+…
も無限級数の一例です。数列{n}を単に+で結んだだけの式ですから。
無限級数の和の定義
数列の項は自然数と対応していますから、無数にあります。無数にある数をすべて足し合わせつことはできません。いつまでたっても足し算をし続けなければならないのですから。
一気に全部を足し合わせたという感覚は持っていてもいいです(実際に一気に足し合わせたという期待が込められている)が、数学的には無数の足し算を一気にやる方法は定義できません。
それでは、数学的にはどうのように無限級数の和を定義しているのかを記します。
数列{an}が与えられたとき、これから別の数列
a1,(a1+a2),(a1+a2+a3),…,(a1+a2+…+an),…
を作ります。この数列がある実数Sに収束するときに、
\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_n\)は和Sを持つとか、和Sに収束するなどといい、
\[\displaystyle a_1+a_2+a_3+…+a_n+…=S\]
\[\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_n =S\]
と書きます。
収束しない場合は、無限級数は発散するといいます。
つまり、無限級数の和とは、ある数列から別の数列を作って、その数列の極限(値)のことをいうのです。
数列から、別の数列の作り方は、他にもあります。例えば、
\(a_1,(a_1+2a_2),(a_1+2a_2+3a_3),…,(a_1+2a_2+…+na_n),…\)
のように重みをつけた数列も定義でき、その極限値を級数の和と定義することもできます(これは偏屈な定義の例で通常このような定義は使用しません)。
数列の部分和
数列{an}に対し、
上記ででてきた数列、
a1,(a1+a2),(a1+a2+a3),…,(a1+a2+…+an),…
を順にS1,S2,S3と表し、これらSnを部分和といいます。
\[\displaystyle S_n=a_1+a_2+a_3+…+a_n\]
この数列がある実数Sに収束するとき、数列{an}は和Sを持つというのが先程級数の和で記した通りです。
部分和の定義をつかって言い換えることができます。
無限級数\(a_1+a_2+a_3+…+a_n+…\)が和Sを持つ
⇔
部分和の列、\(S_1,S_2,S_3,…,S_n,…\)がSに収束する。
これが(通常の)無限級数の和の意味です。
無数の回数の足し算はできませんが、部分和の収束は定義できるので、それを持って、すべての項を足した数と定義しているのです。
まとめ
- 無数の項を足し合わせることはできない。
- 部分和を作って数列を作ることができる。
- その部分和の数列が収束するときそれを無限級数の和として定義できる。
- 無限級数の和とはすべての項を足し合わせたものではない。部分列の極限(収束値)のことである。
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※上記では実数の数列に対して級数を定義しましたが、もちろん複素数に対しても同様に定義できます。
※部分和の作り方を変更することで別の級数の和が定義できます。実際いろんな定義があって、それらを一般に総和法と呼んでいます。
※部分和が∞に発散する場合\[\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_n =∞\]と書くこともよくあります。