解と根
言葉の使い分けの話です。
自分でもどっちを使おうか、統一しようか悩む事もありますが、自分の中の結論としては、使いやすい方を使うことにしています。
つまり、混在して使っています。
世の中、根と解を区別して使ってる方も多数おられて、それはそれで文句をいうつもりはありません。
また、区別するために無理矢理「根」と「解」の新たな定義付けをされてるように感じるところもあります(あまりにも画一的だと違和感あり)。
私としては、両者を区別することでなにか理解が深まるのかというと、そうでもないと思います。
両者を同じ意味として受け止めて問題ないです(なんとタイトルと逆説)。
たとえ、根が解にかわったところで、数学的な命題の真偽が変わったり、数式の解釈が変わるなどといった不都合にであったことはありません。
個人的な「解」と「根」の使い分け
必ずしも、このように使い分けが正しいと決めてるわけではありませんが、私の場合下記のような使い分けをしています。
「解」は、関係式(方程式)に対して使います。
(変数xに関する)方程式とは、[xについての式]=[xについての式]のように、等号で結ばれた式のことです。
例えば、
x2+3x=11
のような等号記号「=」を含んだ式が方程式です。
等号記号は不等号(<、≦、>、≧)の場合もあります(この場合には不等式と別の言い方をしますが、不等式も関係式の一つと考えることができます)。
なんらかの関係式において、その関係を満たす変数の値を「解」と呼んでいます。
解というのは、なんらかの問題の答えです。
なんらかの関係式(方程式)があって初めて、解という存在が意味をなします。
それに対して、「根」とは、根号の「根」と同じように、方程式ではなく単なる式に対して使っています。
例えば2の「平方根」は√2と書きます。
これは、方程式x2=2の「解」の(うち正の方)ことです。
単なる自然数2に対しては、解という概念はなく、概念があるとしたら根です。
2乗する事を「平方」という言う場合があります。
例えば、3の平方は9です。
こんな感じ。
それと同じように、
aの平方根といえば、それは√aの事です。
あえて、意味がない書き方をしますが、
もし、「x2=aの根」という言い方をする人がいたなら、
私はそれを、\(\sqrt{x^2=a}\ の事だと解釈してしまい、何のことかわからず混乱するでしょう。
「方程式の根っていったい何?」といったツッコミが浮かびます。
解と根の使い分け例文
(正しい使い方)「x2+3x+2=0の解は-1と-2である。」
(誤った使い方)「x2+3x+2=0の根は-1と-2である。」
(正しい使い方)「x2+3x+2の根は-1と-2である。」
(誤った使い方)「x2+3x+2の解は-1と-2である。」
(正しい使い方)「4の平方根は±2である。」
(誤った使い方)「4の平方解は±2である。」※さすがに、この言い方許されないだろう。
(正しい使い方)「ax2+bx+c=0の解の公式は(-b±√(b2-4ac))/2aである。」
(誤った使い方)「ax2+bx+cの解の公式は(-b±√(b2-4ac))/2aである。」
となります。
「重解」と「重根」
方程式に対しては「重解」、多項式に対しては「重根」と言います。
例1:多項式f(x)は重根を持ちます。
例2:方程式f(x)=0は重解を持ちます。
根と解のまとめ
- 関係式に対しては「解」を使う。多項式など単なる式に対しては「根」を使う。
- 方程式(不等式)に対しては「解」というのに意味があるから(その方程式を満たすかどうかで)。
- 多項式など単なる式に対しては「解」というのは意味がわからない(しかし、通常は右辺に「=0」を補ってできる方程式の解を意味するものだと解釈できるので、目くじら立てる必要はない)。
- 個人的に「多項式の根」は違和感ないが、「方程式の根」という言い方はなじまない。
- 結局は、文脈から意味が通じれば用語はどちらを使っても問題なし。
多項式の根なんて表現してる人ほかに見たことありますか?
コメントありがとうございます。
昔はよく「根」を使っていましたが、すみません、最近は(特に学校教育の現場では)そうでもないかもしれません。
私は、一社会人ですので個々の現場の状況を把握しきれず、回答もうしあげにくいですが、
用語の使い方は、現場の状況(習慣)によると思います。
私は、
根(こん)というのは、根っこ、つまり、「(本質の)元をたどってたどって、さかのぼった所にあるもの」
といったニュアンスで、解とは、なんらかの問題の答えといったニュアンスを込めて使っています。
> 多項式の根なんて
いや、むしろ多項式にしか「根」は使わないと思いますよ。
「根」は多項式環などの文脈でよく使います。
多項式P(x)の根というのは、P(x)=0という方程式の解のことですが、
「解」という言葉を使うためには、
多項式P(x)そのものだけでなく、
P(x)に「=0」をつけ足して得られる方程式を考える必要があって、
多項式の中だけで話が完結しないわけです。
例えば、多項式の因数分解などは、「=0」をつけ足して方程式を考えたりしなくても、
多項式自体について考えることのできる概念です。
そこで「根」という用語を使うことができれば、
「多項式 x^2-3x+2 は二つの根 1,2 を持つから、因数として (x-1), (x-2) を持つ 」
のように言えるわけですね。多項式環の用語としてふさわしいですよね。
概念形成の黎明期においては解も根もあいまいに使われていたかもしれませんが、
現代的な用語としては、「根」は多項式に使い、「解」は方程式に使う、
というように使い分けられていると思います。
コメントありがとうございます。
私もその考えに同意です。
私は、もともとの概念として、「多項式の根」というのは
その多項式を特徴つける指標のようなものだと考えています。
その指標として、多項式=0の解を
使うのが最もふさわしいと考えます。
おっしゃる通り、
例えば、多項式 x^2-3x+2の因数は、根1,2から引き出せます。
また、根の数によって、多項式の次数が対応します。