恐れ入りますが、数式表示されるまでにはしばらく時間がかかります。

 

\(n\)を3以上の整数とする。

袋の中に\(n\)枚のカードがあり、

1枚は両面とも赤
1枚は両面とも白
他の\((n-2)\)枚は片面が赤でもう片面が白
のカードとする。

この袋から、2枚のカードを同時に抜き出し、無作為にテーブルに並べる。

この時、2枚のカード抜き取りテーブルに置いた時の事象A,B,Cを
事象A:上の面がともに赤である
事象B:下の面がともに白である
事象C:下の面が赤白1枚ずつである
とする。

 

問題

(1)事象Aの起こる確率\(P(A)\)を求めよ。

(2)事象Aが起こった時に、事象Bの起こる確率\(P_A(B)\)を求めよ。

(3)事象Aが起こった時に、事象Cの起こる確率を\(P_A(C)\)とする。\(P_A(B)\)と\(P_A(C)\)の大小を比較せよ。

[関西大]

 

 

考え方

 

両面赤と両面白のカードが混ざっている分計算がちょっとややこしくなりますが、それによって条件付き確率の問題ができあがっています。

冗長にはなりますが、誤解が生じないよう、途中を省略せずに丁寧に答えを導いて行きます。

 

両面赤のカードを[赤赤]
両面白のカードを[白白]
片面がそれぞれ赤と白のカードは、[赤白]と表記することにします。

紛らわしいですが、テーブルにおいた場合には上面がどの色かも区別する必要があるため、

二重括弧[[ ]]記号の場合は、

[[赤白]]は、片面がそれぞれ赤と白のカードでテーブルに赤を上面に置いた状態、

[[白赤]]は、片面がそれぞれ赤と白のカードでテーブルに白を上面に置いた状態、

[[赤赤]]は、両面が赤のカードをテーブルに置いた状態(上面は赤)、

[[白白]]は、両面が白のカードをテーブルに置いた状態(上面は白)、

という意味で使います。

 

なお、2枚ならべますが、その順番は無視します。

例えば、( [[赤赤]] [[白白]] )と( [[白白]] [[赤赤]] )は同じ状態とみなします。

そのほうが若干計算量が減りますので(数字が大きくならない)。

 

 

(1)事象A(赤と赤)の起こる確率\(P(A)\)を求めよ。

まず、カードから2枚抜き取った場合を次の4通りに分割して考えます。

  • 場合1:抜き取ったカードが[赤赤]と[赤白]の場合
  • 場合2:抜き取ったカードが[赤白]と[赤白]の場合
  • 場合3:抜き取ったカードが[白白]と[赤白]の場合
  • 場合4:抜き取ったカードが[白白]と[白白]の場合

これら4パターンは排反しますので、それぞれの場合の確率は独立です。

まず、それぞれの場合が起こる確率を求めます。

場合1:抜き取ったカード2枚が[赤赤]と[赤白]のとなる確率

\(n\)枚のカードから2枚とる組み合わせは、\(\displaystyle {}_nC_2\)です。

この組み合わせの中で、[赤赤]と[赤白]である組み合わせは、\(\displaystyle 1 \cdot (n-2)\)通りです。

したがって、

抜き取ったカード2枚が[赤赤]と[赤白]のとなる確率は、

\(\displaystyle \frac{ 1 \cdot (n-2)}{ {}_nC_2}\)

\(\displaystyle =\frac{ n-2}{ n(n-1)/2 }\)

\(\displaystyle =\frac{ 2 (n-2)}{ n(n-1) }\)

 

場合2:抜き取ったカード2枚が[赤白]と[赤白]のとなる確率

\(n\)枚のカードから2枚とる組み合わせは、\(\displaystyle {}_nC_2\)です。

この組み合わせの中で、[赤白]と[赤白]である組み合わせは、\(\displaystyle {}_{n-2}C_2\)通りです。

したがって、

抜き取ったカード2枚が[赤赤]と[赤白]のとなる確率は、

\(\displaystyle \frac{ {}_{n-2}C_2}{ {}_nC_2}\)

\(\displaystyle =\frac{ (n-2)(n-3)/2}{ n(n-1)/2 }\)

\(\displaystyle =\frac{ (n-2)(n-3)}{ n(n-1) }\)

 

場合3:抜き取ったカード2枚が[白白]と[赤赤]のとなる確率

\(n\)枚のカードから2枚とる組み合わせは、\(\displaystyle {}_nC_2\)です。

この組み合わせの中で、[白白]と[赤赤]である組み合わせは、\(\displaystyle 1\)通りです。

したがって、

抜き取ったカード2枚が[白白]と[赤赤]のとなる確率は、

\(\displaystyle \frac{2}{ n(n-1) }\)

 

場合4:抜き取ったカード2枚が[白白]と[赤白]のとなる確率

場合1の赤と白が入れ替わっている状態なので、確率は場合1と同じ式で

\(\displaystyle \frac{ 2 (n-2)}{ n(n-1) }\)

 

 

場合1、場合2、場合3、場合4の合計

念のために場合1、場合2、場合3、場合4の起こる確率を合計してみます。

\(\displaystyle \frac{ 2 (n-2)}{ n(n-1) }+ \frac{ (n-2)(n-3)}{ n(n-1)}+\frac{1}{ n(n-1)} +\frac{ 2 (n-2)}{ n(n-1) }\)

\(\displaystyle =\frac{ 2 (n-2) +(n-2)(n-3) +2+2(n-2) }{ n(n-1) }\)

\(\displaystyle =\frac{ 2n-4+n^2-5n+6+2+2n-4} { n(n-1) }\)

\(\displaystyle =\frac{ n^2-n }{ n(n-1) } \)

\(\displaystyle =1\)

とちゃんと1になっていますから、

きっちりと排反独立に場合分けできていることが確認できます。

 

計算間違い、考え方に漏れがないか、このように合計を計算することで確認できます。

万が一、合計が1にならなかった場合は、どこかで計算を間違えているか考え方に漏れ、もしくは重複があることになります。

 

場合1で2枚とも上面が赤になる確率

さらに、場合1の場合でカードをテーブルに置くと

  • [[赤赤]] [[赤白]]
  • [[赤赤]] [[白赤]]

の2パターンがありえます。これらが排反独立であることはすぐに確認できます。

問題文に無作為に置くと書いてあるのは、これら2パターンは同じ確からしさで起こり得るという意味ですから、それぞれの発生する確率は\(\displaystyle \frac{1}{2}\)です。

したがって、場合1が起こり、かる両面が赤になる確率は、

\(\displaystyle \frac{ 2 (n-2)}{ n(n-1) } \frac{1}{2}\)

\(\displaystyle =\frac{n-2}{ n(n-1) } \)

となります。

 

場合2で2枚とも上面が赤になる確率

場合2の場合でカードをテーブルに置くと

  • [[赤白]] [[赤白]]
  • [[赤白]] [[白赤]]
  • [[白赤]] [[赤白]]
  • [[白赤]] [[白赤]]

の4パターンがありえます。

それぞれの発生する確率は\(\displaystyle \frac{1}{4}\)です。

([[赤白]] [[白赤]])と([[白赤]] [[赤白]])を区別しているところに注意が必要です。

上記の4パターンの発生する確率が同じ確からしさを維持するためにはこの区別は必要です。

したがって、場合2が起こり、かる両面が赤になる確率は、

\(\displaystyle \frac{ (n-2)(n-3)}{ n(n-1)} \frac{1}{4}\)

\(\displaystyle =\frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)} \)

となります。

 

場合3で2枚とも上面が赤になる確率

これは起こりえませんから確率は0です。

 

場合4で2枚とも上面が赤になる確率

これは起こりえませんから確率は0です。

 

上面が赤になる確率

これまでの考察をすべて総合すると、抜き出したカード2枚をテーブルに置いたときに、2枚とも赤である確率\(\displaystyle P(A)\)が求められます。

 

\(\displaystyle P(A)=\frac{ (n-2)}{ n(n-1) }+\frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)} \)

\(\displaystyle =\frac{ 4(n-2)+(n-2)(n-3) }{ 4n(n-1) } \)

\(\displaystyle =\frac{ (n-2)(4+n-3) }{ 4n(n-1) } \)

\(\displaystyle =\frac{ (n-2)(n+1) }{ 4n(n-1) } \)

 

これが答えです。

 

 

 

 

(2)事象Aが起こった時に、事象Bの起こる確率\(P_A(B)\)を求めよ。

\(\displaystyle P_A(B)=\frac{P(A \cap B)}{P(A)}\)

ですから、

\(\displaystyle P(A \cap B),P(A)\)

を求めればよいことになります。

\(\displaystyle P(A)\)はすでに問題(1)で求めました。

 

ここで、新たな確率記号を導入します。

記号\(\displaystyle P([[ 赤白]][[ 白赤]] )\)で
2枚のカード [赤白]と[赤白] を抜き取り、
かつテーブルに置いた時に [[赤白]][[白赤]] の状態
になった場合の確率を表すこととします。

(1)では、

  • P([[赤赤]][[赤白]])
  • P([[赤赤]][[白赤]])
  • P([[赤白]][[赤白]])
  • P([[赤白]][[白赤]])
  • P([[白赤]][[赤白]])
  • P([[白赤]][[白赤]])

を求めたわけですが、同様にすれば、他の

  • P([[白白]][[赤白]])
  • P([[白白]][[白赤]])
  • P([[白白]][[赤赤]])

も求めることができます。

色の置換を考えることで、

P([[赤赤]][[赤白]]) = P([[白白]][[白赤]])などの関係があることもわかります。

 

改めて、これらの確率を再掲しますと、

  • \(\displaystyle P([[赤赤]][[赤白]]) = \frac{n-2}{ n(n-1) } \)
  • \(\displaystyle P([[赤赤]][[白赤]]) = \frac{n-2}{ n(n-1) } \)
  • \(\displaystyle P([[赤白]][[赤白]]) = \frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)} \)
  • \(\displaystyle P([[赤白]][[白赤]]) = \frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)} \)
  • \(\displaystyle P([[白赤]][[赤白]]) = \frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)} \)
  • \(\displaystyle P([[白赤]][[白赤]]) = \frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)} \)
  • \(\displaystyle P([[白白]][[赤白]]) = \frac{n-2}{ n(n-1) } \)
  • \(\displaystyle P([[白白]][[白赤]]) = \frac{n-2}{ n(n-1) } \)
  • \(\displaystyle P([[白白]][[赤赤]]) = \frac{2}{ n(n-1)} \)

です。

 

\(\displaystyle P(A)=P( [[赤赤]][[赤白]])\)+P( [[赤白]][[赤白]])\)

\(\displaystyle P(A \cap B)=P( [[赤白]][[赤白]])\)

ですから、

\(\displaystyle \frac{P(A \cap B)}{P(A)}= \frac{\frac{ (n-2)(n-3)}{ 4n(n-1)}}{ \frac{ (n-2)(n+1) }{ 4n(n-1) } }\)

\(\displaystyle = \frac{ (n-2)(n-3)} {(n-2)(n+1)}\)

と答えを得ます。

 

(3)事象Aが起こった時に、事象Cの起こる確率を\(P_A(C)\)とする。\(P_A(B)\)と\(P_A(C)\)の大小を比較せよ。

\(\displaystyle P_A(C)=\frac{P(A \cap C)}{P(A)}\)

\(\displaystyle P_A(A \cap C)=P([[赤赤]][[赤白]])\)

\(\displaystyle P(A)=P( [[赤赤]][[赤白]])\)+P( [[赤白]][[赤白]])\)

ですから

\(\displaystyle P_A(C)=\frac{\frac{ n-2}{ n(n-1) }}{\frac{ (n-2)(n+1) }{ 4n(n-1) }}\)

\(\displaystyle =\frac{4}{ n+1 }\)

 

問題の大小比較するために、確率の差を求めてみます。

\(\displaystyle P_A(B)-P_A(C)\)

\(\displaystyle =\frac{n-3}{ n+1 } – \frac{4}{ n+1 }\)

\(\displaystyle =\frac{n-7}{ n+1 }\)

ですから、\(n=7\)で差が負になるか正になるかの分岐点になっていることがわかります。

 

解答

(1)

\(\displaystyle \frac{(n-2)(n+1)}{4n(n-1)}\)

 

(2)

\(\displaystyle \frac{n-3}{n+1)}\)

 

(3)

3≦n≦6のとき、\(\displaystyle P_A(B)<P_A(C)\)

n=7のとき、\(\displaystyle P_A(B)=P_A(C)\)

8≦nのとき、\(\displaystyle P_A(B)>P_A(C)\)

 

補足

条件付き確率とは、事象Aが起きたという前提で事象Bが起こる確率のことです。

事象Aが起きた前提をもとに確率を計算するので、条件付きといいます。

事象Aが起きたという前提で事象Bが起こる確率を\(\displaystyle P_A(B)\)と記し、

\(\displaystyle P_A(B)=\frac{P(A \cap B)}{P(A)}\)

で計算できる。

という公式があります。

 

\(\displaystyle P([[赤白]][[白赤]])\)

を求めるときに、

  • [[赤白]] [[赤白]]
  • [[赤白]] [[白赤]]
  • [[白赤]] [[赤白]]
  • [[白赤]] [[白赤]]

と場合分けし、それぞれ\(\frac{1}{4}\)と確率を求めましたが、これも

2枚のカード[赤白][赤白]を抜き取ったという前提で

テーブルにカードを置いたら[[赤白]][[白赤]])の状態

になる確率とみてとれますので、

\(\displaystyle P_{ [赤白] [赤白] }([[赤白]][[白赤]])=\frac{1}{4}\)

と書くことができます。