それでは、新しい実数を作っていきます。既存の実数を使い、それを拡張する方法で作ります。
数列を母体にする
数列から新しい実数を作ります。ある数列の一つを{an}のように中括弧でくくって表現します。
{an}:=a1,a2,a3,…
です。aはこの数列の名前です。nが添字で自然数が対応します。
煩わしかったり、混乱がなければこの数列を単に{a}と添字を省略して書くこともあります。
また、数列{an}の各項は実数としておきます。
S:={{an}| {an}は 数列で、anは実数}
このSが新しい実数の母体となります。
この数列の集合を、短く数列群と呼びます。
数列に演算を定義する
数列には四則演算が定義できます。といっても、普通の体のようにはなりません。ここは重要な所で見過ごせないところなのですが、まずはできるところまで数の構築を進めます。
二つの数列{an},{bn}に対し、その和、差、積を下記のように定義します。
{an}+{bn}:={an+bn}
{an}-{bn}:={an-bn}
{an}*{bn}:={an**bn}
{an+bn}とは、第n項がan+bnである数列を意味します。普通に使われている記号なので特に断りなく使用しました。つまり、二つの数列の各項をそれぞれ、足したり、引いたり、掛けたりすると新しい数列が定義できるのでそれらを和、差、積として使うわけです。
商に関しても同じようにしますが、各項の中に0があるとその項では割り算ができないため、ちょっと条件が追加になります。
{an}/{bn}:={an/bn} ただし、bn ≠0とする。
ゼロを項に含まない数列だけに対して割り算(逆元)を定義し商を作ります。
各項については実数ですから、数列の演算に対しても、交換、結合、分配の法則が引き継がれることは簡単に示せます。
これで、この数列群に四則演算が定義できました。
ただし、除算に関しては実数と違っています。
実数で割り算ができないのは、0だけですが、数列群では項の中に一つでも0がある数列は除算ができません。
数列群では、割り算ができない数列が無限にある事になります。
数列の四則演算例
an=5,6,7,8,9,…
bn=2,4,6,8,10,…
(nは自然数)
とします。
式でかくと、
{an}={n+4}、{bn}={2n}
です。
この二つの加減乗除は下記のように計算されます。
和:{an}+{bn}={3n+4}=7,10,13,16,…
差:{an}-{bn}={-n+4}=3,2,1,0,…
積:{an}*{bn}={2n2+8n}=10,24,42,64,…
除:{an}/{bn}={1/2+2/n}=5/2,3,7/6,1,…
です。
数列群は四則演算が定義できますね。ただし、0以外のゼロ因子が多数(無限個)あります。
まとめ
数列{a},{b}に対して四則演算が定義できる。
- {a}+{b}={a+b}
- {a}-{b}={a-b}
- {a}*{b}={a*b}
- {a}/{b}={a/b} (ただし{b}のすべての項は0でない)
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