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問題

次の無限級数の和を求めよ。

 

(1)

\(\displaystyle \frac{1}{3}+\frac{4}{3^2}+\frac{7}{3^4}+\frac{10}{3^4}+\cdots \)

 

(2)

\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^n-1}{5^n}\)

 

 

(3)

\(\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^k \cdot k}{2^k}\)

 

 

 

 

解き方

どういった数列の和になっているのか調べます。

等差数列、等比数列の級数になっていれば公式から和を求めることができます。

もちろん、収束するかどうかの判定も必要です。

次の極限に関する公式を使います。

\(\displaystyle |r| \lt 1 \Rightarrow \lim_{n \rightarrow \infty} nr^n =0\)

この公式は、例えば、

\(\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} n \left( \frac{2}{3} \right) ^n =0\)

のような形で使用します。

 

(1)

まずは形式に問題文を書き直すします。

\(\displaystyle \frac{1}{3}+\frac{4}{3^2}+\frac{7}{3^3}+\frac{10}{3^4}+\cdots \)

\(\displaystyle =\sum_{n=1}^{\infty} \frac{3n-2}{3^n}\)

分子は公差3の等差数列、分母は公比3の等比数列となっています。

等比数列でも等差数列でもありませんが、次の方法で部分和を求めることが可能です。

 

王道の方法で、部分和がどうなっているのか調べます。

公式がある場合などを除き、一般的に総和を調べる場合は必ず部分和を求めます。

なぜ、部分和で考えるのかというと、部分和の取り方によって極限が変わる場合があるからです。

ここをきちんと抑え込まなければ、極限のパラドックスを生んでしまいます。

 

 

部分和を\( S_n \)とすると、

\(\displaystyle S_n= \left(\frac{1}{3}\right)+4\left(\frac{1}{3}\right)^2+7\left(\frac{1}{3}\right)^3+10\left(\frac{1}{3}\right)^4+\cdots +(3n-2)\left(\frac{1}{3}\right)^n\)

両辺に公比を掛けます。

\(\displaystyle \frac{1}{3} S_n= \left(\frac{1}{3}\right)^2+4\left(\frac{1}{3}\right)^3+7\left(\frac{1}{3}\right)^4+10\left(\frac{1}{3}\right)^5+\cdots +(3n-2)\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}\)

上記2式の差をとります。

これは部分和なので無限級数ではありませんから差を取る操作は、通常の文字式と同じように計算できます。

\(\displaystyle \frac{2}{3} S_n= \left(\frac{1}{3}\right)+(4-1)\left(\frac{1}{3}\right)^2+(7-4)\left(\frac{1}{3}\right)^3+(10-7)\left(\frac{1}{3}\right)^4+\cdots +3\left(\frac{1}{3}\right)^{n}-(3n-2)\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}\)

\(\displaystyle = \left(\frac{1}{3}\right)+\left\{\left(\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{3}\right)^2+\left(\frac{1}{3}\right)^3+\cdots +\left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}\right\}-(3n-2)\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}\)

分子が等差数列であったため、うまく打ち消し合い部分和が計算できるようになりました。

なお、この問題の場合は、さらに公差と公比が同じ因子3であったため、さらに式が簡単になりました。

等比数列の和の公式を使うと

\(\displaystyle \frac{2}{3} S_n= \left(\frac{1}{3}\right)+\frac{1}{3}\frac{1-(1/3)^{n}}{1-(1/3)}-(3n-2)\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}\)

を得ることができます。

 

よって、

\(\displaystyle \frac{2}{3} S_n= \frac{1}{3}+\frac{1}{2}-3n\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}+2\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}\)

 

 

(2)

等差数列と等比数列の積からなる無限級数の形ではありませんが

部分和を\(S_n\)として、(1)と同じようなやり方で、\(S_n-\frac{2}{5}S_n\)を求めてから\(S_n\)を求めることができます。

\(\displaystyle S_n = \frac{1}{5}+ 3\left(\frac{1}{5}\right)^2+ \cdots+ (2^n-1)\left(\frac{1}{5}\right)^n\)

\(\displaystyle \frac{2}{5}S_n = 2\left(\frac{1}{5}\right)^2+ 6\left(\frac{1}{5}\right)^3+ \cdots+ (2^{n}-2)\left(\frac{1}{5}\right)^{n}+ (2^{n+1}-2)\left(\frac{1}{5}\right)^{n+1}\)

から、

\(\displaystyle S_n-\frac{2}{5}S_n= \frac{3}{5}S_n\)

を求めます。

\(\displaystyle \frac{3}{5}S_n = \frac{1}{5}
+\left\{ \left(\frac{1}{5}\right)^2+ \cdots+ \left(\frac{1}{5}\right)^n \right\}
– (2^{n+1}-2)\left(\frac{1}{5}\right)^{n+1}\)

 

\(\displaystyle \frac{3}{5}S_n = \frac{1}{5}
+\left\{ \left(\frac{2}{5}\right)^{2} \frac{1-(1/5)^{n-1}}{1-1/5} \right\}
– \left(\left(\frac{2}{5}\right)^{n+1}-2\left(\frac{1}{5}\right)^{n+1} \right)\)

 

 

 

(別解)

この無限級数は、二つの等比数列の差になっています。

ですが、注意が必要です。

\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^n-1}{5^n}\)

無限級数の和の場合、安易に足していく順番を交換してはいけません。

つまり、

\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^n-1}{5^n}\)

\(\displaystyle =\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^n}{5^n}-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{5^n}\)

と項を二つのグループに分割して足した答えが、もとの級数の和を表しているのかどうかは不明です。

(二つのグループにわけて足すことは、足す順番を入れ替えていることになります。)

ただ、この問題の場合は結果的に分割しても同じ答えになります。

それは、部分和の式の形から判断できます。

 

一般的に絶対収束する無限級数の和であれば、項を分割してもよいことが知られています。

 

無限級数を扱う場合の定石は、まず、部分和を求めることです。

部分和の場合は足す順番を交換できます。

部分和の形から足す順番を入れ替えてもよいのか判断できます。

 

\(\displaystyle \sum_{n=1}^{m} \frac{2^n-1}{5^n}\)

\(\displaystyle =\sum_{n=1}^{m} \frac{2^n}{5^n}-\sum_{n=1}^{m} \frac{1}{5^n}\)

\(\displaystyle =\sum_{n=1}^{m} \left(\frac{2}{5}\right)^n-\sum_{n=1}^{m} \frac{1}{5^n}\)

\(\displaystyle =\frac{2}{5} \frac{1-(2/5)^m}{1-2/5}-\frac{1-(1/5)^m}{1-1/5}\)

ここで\( m \rightarrow \infty\)とすれば、部分和の極限(つまり無限級数の和)が求められます。

 

 

 

(3)

\(\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^k \cdot k}{2^k}\)

\(\displaystyle =\sum_{k=1}^{\infty} k \left(-\frac{1}{2}\right)^k \)

 

公差1の等差数列{n}と公比(-1/2)の等比数列の積からなる無限級数です。

公比が負の数になっていますが、(1)と同様のやり方で無限級数の和を求めることができます。

見かけはややこしいですが、(1)よりも構造は簡単です。

 

\(\displaystyle S_n = \frac{-1}{2}+ 2\left(\frac{-1}{2}\right)^2+ \cdots+ (n)\left(\frac{-1}{2}\right)^n\)

\(\displaystyle -\frac{1}{2}S_n = \left(\frac{-1}{2}\right)^2+ 2\left(\frac{-1}{2}\right)^3+ \cdots+ (n-1)\left(\frac{-1}{2}\right)^{n}+ n\left(\frac{-1}{2}\right)^{n+1}\)

から、

\(\displaystyle S_n-\frac{-1}{2}S_n= \frac{3}{2}S_n\)

を求めます。

\(\displaystyle \frac{3}{2}S_n = \frac{-1}{2}
+\left\{ \left(\frac{-1}{2}\right)^2+ \cdots+ \left(\frac{-1}{2}\right)^n \right\}
– n\left(\frac{-1}{2}\right)^{n+1}\)

 

\(\displaystyle \frac{3}{2}S_n = \frac{-1}{2}
+\left\{ \left(\frac{-1}{2}\right)^{2} \frac{1-(-1/2)^{n-1}}{1+1/2} \right\}
– n\left(\frac{-1}{2}\right)^{n+1}\)

 

解答

(1)

部分和を計算すると、

\(\displaystyle \frac{2}{3} S_n= \frac{5}{6}-3n\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}+2\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}\)

極限をとると、

\(\displaystyle \frac{2}{3} S_n \rightarrow \frac{5}{6}\)

となるので

\(\displaystyle S_n \rightarrow \frac{5}{4}\)

 

 

(2)

\(\displaystyle \frac{3}{5}S_n = \frac{1}{5}
+\left\{ \left(\frac{2}{5}\right)^{2} \frac{1-(1/5)^{n-1}}{1-1/5} \right\}
– \left(\left(\frac{2}{5}\right)^{n+1}-2\left(\frac{1}{5}\right)^{n+1}\right)\)

この部分和の極限を求めると、

\(\displaystyle \frac{1}{5}+\left(\frac{1}{5}\right)^2 \frac{5}{4}\)

\(\displaystyle =\frac{1}{5}+\frac{1}{20}=\frac{1}{4}\)

であるから、

\(\displaystyle \frac{3}{5}S_n \rightarrow \frac{1}{4}\)

 

よって、\(S_n\)は、

\(\displaystyle \frac{5}{12}\)に収束する。

 

 

別解

与えられた無限級数の和は、

\(\displaystyle =\frac{2}{5} \frac{1-(2/5)^m}{1-2/5}-\frac{1-(1/5)^m}{1-1/5}\)

の\( m \rightarrow \infty\)の極限に等しい。

その極限は、

\(\displaystyle \frac{2}{5} \frac{1}{1-2/5}-\frac{1}{5} \frac{1}{1-1/5}\)

\(\displaystyle =\frac{2}{5} \frac{5}{3}-\frac{1}{5}\frac{5}{4}\)

\(\displaystyle =\frac{5}{12}\)

 

 

 

(3)

 

\(\displaystyle \frac{3}{2}S_n = \frac{-1}{2}
+\left\{ \left(\frac{-1}{2}\right)^{2} \frac{1-(-1/2)^{n-1}}{1+1/2} \right\}
– n\left(\frac{-1}{2}\right)^{n+1}\)

の極限をとると、

\(\displaystyle \frac{3}{2}S_n \rightarrow \frac{-1}{2} +\left\{ \frac{1}{4} \frac{2}{3} =-\frac{1}{3} \right\} \)

 

\(\displaystyle S_n \rightarrow -\frac{2}{3}\frac{1}{3} =-\frac{2}{9} \)

 

 

答え

(1)

\(\displaystyle \frac{5}{4}\)

 

(2)

\(\displaystyle \frac{5}{12}\)

 

(3)

\(\displaystyle -\frac{2}{9}\)

 

 

 

 

その他の問題: 数列の極限の問題一覧

 

 

 

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