2次方程式の解の公式

\(ax^2+bx+c=0,(a \ne 0)\)という\(x\)に関する2次方程式の解\(x\)は、

\[x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\]

で与えられる。

というのが解の公式と呼ばれるものです。

式の形を覚えるのに苦労しますが、完全に覚え使いこなせるようになると、かなり便利な公式で有名です。

しかし、この公式が使えない場合があります。それは、複素数係数の場合です。

 

複素数係数の2次方程式においては解の公式が使えない

通常、2次方程式\(ax^2+bx+c=0,(a \ne 0)\)の係数\(a,b,c\)は実数として使用しますが、複素数であっても、この公式自体は問題ありません。

 

解の公式が使えないと言う理由

ただし、\(\sqrt{b^2-4ac}\)の根号の中身が複素数であるため、簡単に根号計算ができないところに注意が必要です。中学の数学では根号の中は正またはゼロの実数、高校での数学でも、根号の中は実数のみを扱い、複素数の場合は対象外です。

なぜ、根号の中が複素数であると問題があるのか、それは根号計算を注意深くする必要があるからです。

次の計算例を考えてみてください。

\[\sqrt{-2} \cdot \sqrt{-3}=\sqrt{(-2)(-3)}=\sqrt{6}\]

この計算は間違っています。

\[\sqrt{-2} \cdot \sqrt{-3}=\sqrt{2}i \cdot \sqrt{3}i=\sqrt{6}i^2=-\sqrt{6}\]

これが正しい計算です。

このように、根号計算では、根号内を正または0にしなければ正しく計算されません。もし、根号の中が負であれば、ただちに虚数単位\(i\)をつかって正にしてから計算する必要があるのです。

根号の中が負で正しく計算されないわけですから、虚数の場合はなおさら注意しながら正しい計算方法を吟味する必要があります。

間違い例をもう一丁。

\[\sqrt{-i} \cdot \sqrt{i}=\sqrt{-i^2} =\sqrt{1}=1\]

\[\sqrt{-i} \cdot \sqrt{i} = \sqrt{i}i \cdot \sqrt{i} = ( \sqrt{i})^2i = ii=-1\]

ここが注意点です。

したがって、複素数係数の2次方程式に対して解の公式を使った場合、根号の中が(実数でない)複素数になる可能性があります。解の公式をつかって求めた解がどんな数なのか、よくわからないというのが解の公式が使えない理由の一つです。

実は、根号の中が複素数の場合、根号の中を整理してから計算する必要があるのです。

 

もう一つの使えないと言う理由

こちらが致命的です。

たとえば、簡単な例として、\(x^2-i=0\)つまり、虚数単位\(i\)の平方根を考えて見ます。

解の公式にあてはめてみますと、

\(x=\frac{\pm \sqrt{4i}}{2} = \pm \sqrt{i}\)

まあ、式としては、意味が通じますが、これを解いたというかどうかです。

答えとして、\(x=\frac{\sqrt{2}+ \sqrt{2}i}{2},\frac{-\sqrt{2}- \sqrt{2}i}{2}\)とするのが解いたといえる状態ではないでしょうか。

解の公式では、このような答えになりません。

この意味において解の公式は、複素数係数の2次方程式には使えないと言えます。

 

複素数係数への対応

それでは、複素数係数の2次方程式はどう解いたらよいのでしょうか。

問題は、複素数の開平の部分ですから、そこを解決すれば解の公式を利用することができます。

つまり、与えられた複素数\(a+bi\)に対して、\((c+di)^2=a+bi\)となるような複素数\(c+di\)を見つけることができれば解決です。

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