\(f(x)=x^3+ax^2+bx+c\)とする。
\(f(x)=0\)の解を\(α、β、γ\)とするとき、
\((α-β)(α-γ)=3α^2+2aα^2+b\)であることを証明せよ。
実はこれ、代数的整数論を勉強するときによく使われる恒等式です。
通常の解と係数の関係を使った解法
解と係数の関係から、
\(α+β+γ=-a\)
\(αβ+βγ+αγ=b\)
である。
恒等式の左辺から右辺を引くと、
\((α-β)(α-γ)-(3α^2+2α+b)\)
\(=(α^2-αγ-αβ+βγ)-(3α^2-2α(α+β+γ)+(αβ+βγ+αγ))\)
\(=(α^2-αγ-αβ+βγ)-(3α^2-2α^2-2αβ-2αγ+αβ+βγ+αγ)\)
\(=(α^2-αγ-αβ+βγ)-(α^2-αγ-αβ+βγ)\)
\(=0\)
よって、左辺=右辺が示された。
微分の知識を使った解法
この問題の証明は、解と係数の関係からなんなく示されるのですが、この恒等式がどこかかでてきているのか知っておくと式の意味がより深くわかります。
\(f(x)\)の導関数は、
\(3ax^2+2ax+b\)
です。
ここで、
\(f(x)=(x-α)(x-β)(x-γ)\)
であることに注意して積の公式を使って導関数をもとめると、
\((x-α)(x-β)+(x-β)(x-γ)+(x-α)(x-β)\)
です。
二つの導関数は同じですから、上記より
\(3ax^2+2ax+b=(x-α)(x-β)+(x-β)(x-γ)+(x-α)(x-γ)\)
という恒等式が得られます。
この恒等式の\(x\)に\(α\)を代入すると証明すべき恒等式が得られます。
代数の問題ですが、微分の知識を使うと見通しがよくなりますね。
共役差積
冒頭で、この恒等式が代数的整数論で使われると書きました。
これがどういうことか少し説明します。
係数のa,bが整数の場合、
\(α\)は、方程式\(f(x)=0\)の解ですから、代数的整数です。
この代数的整数\(α\)に対して、
\((α-β)(α-γ)\)を代数的整数\(α\)の共役差積といって、
\(\mathfrak{D}(α)\)
という記号をつかって書き表します。
代数的整数論では、この値(共役差積)をつかって代数体の構造を調べます。