東大2010年前期文科 数学 第2問から
問題
2次関数\(f(x)=x^2+ax+b\)に対して
\[f(x+1)=c\int_0^1(3x^2+4xt)f'(t)dt\]
が\(x\)についての恒等式になるように定数\(a,b,c\)の組をすべて求めよ。
地道に計算すれば解けそうな問題です。\(f(x)\)は2次式で次数は小さいですが、恒等式をみると微分も積分も計算する必要がありますね。
それでは、解いていきましょう。
復習事項
恒等式
\(x\)に関する恒等式とは\(x\)の値にかかわらず性質している等式のこと。
例1 \((x-1)(x+1)=x^2-1\)
記号について:恒等式であることを強調するために、等号=を≡の記号で表すこともある。
つまり例1の恒等式は、\((x-1)(x+1)≡x^2-1\)と表すこともある。
等式が与えられた時、(左辺)から(右辺)をひいて0になれば、それは恒等式といえる。
多項式の微分公式
\[\frac{d}{dx}x^n=nx^{n-1}\]
多項式の積分公式
\[\int t^ndt=\frac{t^{n+1}}{n+1}+C\:\:(n\neq -1)\]
積分変数\(t\)以外は定数として計算する。
解答
それでは、地道に与えられた\(f(x)\)を恒等式に代入してみます。
\(f(x+1)=(x+1)^2+a(x+1)+b\)
\(f'(x)=2x+a\) を恒等式に代入。
\[(x+1)^2+a(x+1)+b = c\int_0^1 (3x^2+4xt)(2t+a)dt\]
\[x^2+2x+1+ax+a+b = c\int_0^1 (3x^2+4xt)(2t+a)dt\]
右辺は、 部分積分で計算しようかとおもいましたが、それほど楽にならないので、そのまま展開します。
\((恒等式の左辺)\\=x^2+(2+a)x+(1+a+b)\)
\((恒等式の右辺)\\=c\int_0^1 (3x^2(2t+a)+4xt(2t+a))dt\)
\(=c3x^2\left[t^2+at\right]_0^1 +c4x\left[\frac{2t^2}{3}+\frac{at^2}{2}\right]_0^1\)
\(=3cx^2(1+a) +4cx(\frac{2}{3}+\frac{a}{2})\)
\(=3(1+a)cx^2 +c(\frac{8}{3}+{2a})x\)
\(=(3ac+3c)x^2 +(2ac+\frac{8c}{3})x\)
となります。
恒等式なので係数を比較して(左辺から右辺を引いて0係数を0にする)
\(3ac+3c-1=0\) …①式
\(2ac-a+8c/3-2=0\) …②式
\(a+b+1=0\) …③式
3元2次の連立方程式になりました。
これを解くのが本題でしょうか。2次なので、ちょっと工夫がいるかもしれません。
基本的には消去法で1変数の式を作り解いていきます。
ただ、①②の式は\(b\)を含まないで\(a,c\)からなる式なので、これから\(a,c\)が求められるはずです。
\(a\)を消すか\(c\)を消すかですが、ここでは\(a\)を消してみます。
①式より、\(a=-1+\frac{1}{3c}\) …④式
を②式に代入
おっと、一応、分母に\(c\)が来てしまうので、\(c=0\)の場合も別に考えなれけばなりません。
しかし、\(c=0\)の場合は①式が矛盾した式になってしまうので、これはありえません。
\(2(-1+\frac{1}{3c})c+1-\frac{1}{3c}+\frac{8c}{3}-2=0\) …⑤式
⑤式を整理して
\((-2c+\frac{2}{3})+1-\frac{1}{3c}+\frac{8c}{3}-2=0\)
\(-6c^2+2c+3c-1+8c^2-6c=0\)
\(2c^2-c-1=0\)
\(2c+1)(c-1)=0\)
お!因数分解できました。これから、\(c=1,-1/2\)が求まります。
④式から、\(c=1\)の時\(a=-2/3\)、\(c=-1/2\)の時\(a=-5/3\)となり、
それぞれの場合に対して③式から\(b\)を求めると答えがでます。
答え
\[a=-\frac{2}{3},b=-\frac{1}{3},c=1\]
または、\[a=-\frac{5}{3},b=\frac{2}{3},c=-\frac{1}{2}\]
コメント
特に、注意するところもなく、問題の意味をしっかりと理解して計算すれば解ける問題でした。
積分のところが変数が\(x,t\)と二つあるので、ちょっと混乱するかもしれません。\(x\)は定数とみなして\(t\)で積分します。
\(x\)に関しての恒等式なので、\(x=-1,0,1\)などを代入して\(a,b,c\)を求める方法もありますが、これは必要条件からの絞り込みで、求めた\(a,b,c\)が十分であることを示す必要があるので、恒等式であることをきちんと示すという問題としては、遠回りなやり方になります。
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