問題

ある2次関数 \(f(x) = x^2 + ax + b\) について、次のような式が成り立つとします。

\[
f(x+1) = c \int_0^1 (3x^2 + 4xt)f'(t)\,dt
\]

この式が、どんな \(x\) に対してもいつも正しくなる(恒等式になる)ように、定数 \(a\)、\(b\)、\(c\) の値をすべて求めましょう。

まず考えること

この問題は、一つ一つ丁寧に計算すれば解けます。関数 \(f(x)\) は2次式(2乗までの式)なので、難しそうに見えてもやることは限られています。

ただし、式の中には「微分」と「積分」が出てくるので、それらの意味や計算方法を復習しておきましょう。

復習しよう

恒等式ってなに?

恒等式とは、どんな \(x\) の値を入れても両側が同じになる式のことです。

たとえば、次の式はいつも成り立ちます:

\[
(x – 1)(x + 1) = x^2 – 1
\]

このように、恒等式はいつも正しいので、たとえば式の両辺から引き算してゼロになるかどうかで確認することができます。

また、恒等式であることを強調するために、イコールの代わりに「≡」という記号を使うこともあります。

微分の公式(かんたんなルール)

関数 \(x^n\) を \(x\) で微分すると:

\[
\frac{d}{dx}x^n = nx^{n-1}
\]

積分の公式(かんたんなルール)

積分というのは、「足し算の連続」のような操作です。次のような公式を使います:

\[
\int t^n dt = \frac{t^{n+1}}{n+1} + C \quad (n \neq -1)
\]

ここでは積分変数が \(t\) なので、\(t\) 以外の文字(たとえば \(x\))は定数のように扱って計算します。

解いてみよう!

まず、関数 \(f(x)\) の形は次のように与えられています:

\[
f(x) = x^2 + ax + b
\]

これを使って左辺の \(f(x+1)\) を計算すると:

\[
f(x+1) = (x+1)^2 + a(x+1) + b
\]

また、関数の微分(\(f'(x)\))は:

\[
f'(x) = 2x + a
\]

これらをもとの恒等式に代入します。

左辺の計算

\[
(x+1)^2 + a(x+1) + b = x^2 + 2x + 1 + ax + a + b
\]

まとめると:
\[
f(x+1) = x^2 + (2 + a)x + (1 + a + b)
\]

右辺の計算

右辺は次のようになります:

\[
c \int_0^1 (3x^2 + 4xt)(2t + a)\,dt
\]

かっこを展開して:

\[
= c \int_0^1 \left[ 3x^2(2t + a) + 4xt(2t + a) \right] dt
\]

このまま計算を続けます。まず、それぞれの項を積分します:

\[
3x^2 \int_0^1 (2t + a)\,dt = 3x^2 \left[ t^2 + at \right]_0^1 = 3x^2(1 + a)
\]

\[
4x \int_0^1 t(2t + a)\,dt = 4x \int_0^1 (2t^2 + at)\,dt
= 4x\left[ \frac{2}{3} + \frac{a}{2} \right]
\]

まとめると右辺は:

\[
3c(1 + a)x^2 + 4c\left( \frac{2}{3} + \frac{a}{2} \right)x
\]

左右を比べよう

左辺と右辺がいつも等しい恒等式になるためには、\(x^2\) の係数、\(x\) の係数、定数項がそれぞれ等しくなる必要があります。

左辺:

\[
x^2 + (2 + a)x + (1 + a + b)
\]

右辺:

\[
(3ac + 3c)x^2 + (2ac + \frac{8c}{3})x
\]

係数を比べて次の3つの式が得られます:

  • \(3ac + 3c = 1\) …①式
  • \(2ac + \frac{8c}{3} = 2 + a\) …②式
  • \(1 + a + b = 0\) …③式

連立方程式を解こう

まず①式を変形して、\(a\) を求めます:

\[
a = -1 + \frac{1}{3c} \quad \text{(④式)}
\]

この式を②に代入して、計算していきます。少し長くなりますが、最後は次のような形になります:

\[
2c^2 – c – 1 = 0
\]

この式を因数分解すると:
\[
(2c + 1)(c – 1) = 0
\]

つまり:
\[
c = 1 \quad \text{または} \quad c = -\frac{1}{2}
\]

それぞれの \(c\) の値に対して④式から \(a\) を求めると:

  • \(c = 1\) のとき、\(a = -\frac{2}{3}\)
  • \(c = -\frac{1}{2}\) のとき、\(a = -\frac{5}{3}\)

最後に③式で \(b\) を求めると:

  • \(a = -\frac{2}{3}\) のとき、\(b = -\frac{1}{3}\)
  • \(a = -\frac{5}{3}\) のとき、\(b = \frac{2}{3}\)

答え

次の2組が答えになります:

\[
a = -\frac{2}{3},\quad b = -\frac{1}{3},\quad c = 1
\]
または
\[
a = -\frac{5}{3},\quad b = \frac{2}{3},\quad c = -\frac{1}{2}
\]

まとめ

問題自体は、ちゃんと式を代入して整理すれば自然と答えにたどりつくものでした。

途中の積分では、変数が2つ(\(x\)と\(t\))あるので少し注意が必要です。ここでは \(t\) について積分しているので、\(x\) はただの定数と考えてOKです。

ちなみに、\(x = 0,1,-1\) などの値を代入して連立方程式を作ってもよいのですが、それでは「必要条件」しか出ないので、本当に恒等式として正しいとまでは言い切れません。

だから、やっぱり恒等式そのものとして計算して解く方が確実です。