三角関数の代表sinとcosに関する公式はいろいろあって覚えるのには苦労します。
三角関数の公式には、いろいろな覚え方や理解の仕方がありますが、ここではちょっと視点を変えてsinとcosの特徴を述べます。
ちょっとしたことでも、知らないでいると大損しますよ。
ちょっと別の視点から三角関数を見ていきますので、sinやcosの特徴をより多角的に捉えることができると思います。
三角関数sin、cosとは
三角関数とは、三角形に関係する関数だから三角関数と呼びます。
もう少し補足していうと、三角形の角(度)と辺(の長さ)に関する関数です。
さらに、補足すると、三角形の1つの角と2つの辺に関する関数です。
さらにさらに、補足すると、直角三角形の(直角でない)1つの角と2つの辺に関する関数です。
さらにさらにさらに、補足すると、
直角三角形の1つの角と2つの辺の比に関する関数です。
直角三角形の1つの角と2つの辺の選び方は、回転したりして同じになるものを除くと、
6通りあります。
その角と辺の選び方によって、下記のように三角関数が定義され、
- sin : サイン(sineの略)
- cos : コサイン(cosineの略)
- tan : タンジェント(tangentの略)
- cot : コタンジェント(cotangentの略)
- sec : セカント(secantの略)
- cosec : コセカント(cosecant)の略、cscと3文字に略されることもあり。
とそれぞれ名前がついています。
頭に「co-」がついているものが3つあります。
6種類の三角関数の「co-」部分を無視すると3種類の名前になります。
「co-」というのは、「共に」という意味で2つセットでお互いを補う関係を示しています。
たとえばm
sin(サイン)とcos(コサイン)は対の関係になっています。
これら三角関数のなかで最もよく使われるのは、sinとcos関数です。
たまに、tanも使うことがあり、ほんとうにまれにcotも使いますが、sec(セカント)やcsc(コセカント)はまず使いません。
万が一、sec(セカント)やcsc(コセカント)がでてきたとしても、
\(\displaystyle \sec(x)=\frac{1}{\cos(x)}\)
\(\displaystyle \csc(x)=\frac{1}{\sin(x)}\)
の関係があるので、sinとcosに置き換えることができ、
また、
\(\displaystyle \cot(x)=\frac{1}{\tan(x)}=\frac{\cos(x)}{\sin(x)}\)
\(\displaystyle \tan(x)=\frac{\sin(x)}{\cos(x)}\)
ですから、tanやcotもsinとcosに置き換えることができます。
sinとcosに関しては、お互いがお互いを補完し合う形で関係していています。
\(\displaystyle \sin^2(x)+\cos^2(x)=1\)
の関係から、sinだけ、もしくはcosだけの式に置き換えることもある程度はできますが、対称性を考えるとsinとcosを上手に組み合わせて使うとうまくいくことが多いです。
sinとcosの定義ですが、
\(\displaystyle \sin(x)=\frac{対辺}{斜辺}\)
\(\displaystyle \sin(x)=\frac{底辺}{斜辺}\)
です。
対辺か底辺がどこにあたるのかというと、
角に向き合ってる辺が対辺で、角に隣接している辺が底辺です。
ここでは、直角三角形を用いて三角関数を定義しました。
角についてですが、直角三角形の角は、鋭角になりますから、ここで角といってるのは、
0度から90度の範囲になります。
ですが、この制約は自然になくすことができますので、あまり気にすることはないです。
また、細かい話ですが、相似の知識が前提に隠されています。
本当は、2つの相似の関係にある直角三角形では、
\(\displaystyle \sin(x)=\frac{対辺}{斜辺}\)
\(\displaystyle \sin(x)=\frac{底辺}{斜辺}\)
が同じ関数になるという事が定義の前提に使われいるのです。
これは結構見落とされていて、Wikipediaにも書かれていません。
まあ、三角形の性質をある程度しっていれば、常識なのでそれほど噛み付く事もないのですが、定義することがいかに難しいという事がが少し見え隠れしています。
まずは、単純に、三角関数の定義をしっかりと確認しておきましょう。
sinは角に比例する
さきほど、直角三角形を使って三角関数を定義しましたが、斜辺の長さが1の直角三角形を想定して三角関数を考えます。
すると、
\(\displaystyle \sin(x)=対辺\)
\(\displaystyle \sin(x)=底辺\)
となって考えやすくなります。
※このように考えても、sin、cosの本質は失われていません。
sinは対辺の長さを表す関数になります。
直角三角形を考えると、角度が大きくなると対辺の長さも伸びていきます。
ただ、角度が2倍になっても、対辺の長さは2倍になりませんから、
sinの関係は比例関係ではないです。
角度が大きくなるとsin(対辺)が大きくなるので、sinは増加関数です。
これに対して、cosの場合は、
角度が大きくなるとcos(底辺)は小さくなるので、cosは減少関数です。
ぶっちゃけ、角度をラジアンという単位で表すと、
角度θが0に近い場合は、
\(\displaystyle \sin(θ)=θ \)
です。
これは、角度が0に近い所では、sinは角度(ラジアン)にほぼ比例していることを意味しています。
これに対して、cosはこのようになりません。
sinが(角度0から90度の範囲において)増加関数であるのに対し、cosは減少関数です。
sinとcosの2倍角の公式について
実は、2倍角の公式として、
\(\displaystyle \sin(2\theta)=2 \cos(\theta) \sin(\theta)\)
という関係からわかるように、
\(\displaystyle \sin(2\theta)\)は、
\(\displaystyle sin(\theta)\)の\(\displaystyle 2 cos(\theta) \)倍です。
つまり、
角度が2倍になると、sinは\(2 \cos \)倍になります。
cosは1以下の値をとりますから、\(2 \cos \)は2以下の値です。
考えている角度(ここでいうθの値)によって、何倍になるのかは変わってくるのですが、
たとえば、ある角度θにおいては、θが2倍になると、
\(\displaystyle \sin(2\theta) \)は
\(\displaystyle \sin(\theta) \)の1.6倍というように、2倍よりも少ない倍数になります。
ただ、
\(\displaystyle \theta \)が0に近いところでは、\(\displaystyle 2 cos(\theta) \)は2に近い値をとります。
これからも、角が0に近い部分では、sinは角にほぼ、比例していることがわかります。
cosの倍角の公式は、
\(\displaystyle \cos(2\theta)=2\cos(\theta) \cos(\theta)-1\)
です。
あえて
\(\displaystyle \cos^2(\theta)を \cos(\theta) \cos(\theta)\)
と書きました。
-1の部分を無視すると、
cosの場合の比例定数は\(2\cos\)の形でsinの比例定数と同じです。
まあ、\(2\cos\)は定数ではないので比例定数と言ってはいけませんが、
形としては比例定数の場所にあるともみなせるので(変化する)比例定数とも言えます。
ですが、sinのときのように、
近似にしたとしても、
\(\displaystyle \cos(θ)=θ-1 \)
のような事にはなりません。
あえていうのなら、
\(\displaystyle \cos^2(\theta)=1- \sin^2(\theta) \)
に\(\displaystyle \sin(θ)=θ \)を
組み合わせて
\(\displaystyle \cos(θ)=1-θ^2 \)
です。
いうまでもありませんが、これは角度が0に近いときの近似です。
2倍角の公式ではsinとcosは全然違った形として現れます。
ゼロに近いところの角で考えるときには、sinで考えたほうが取り扱い安くなります。
一般的な計算ではcosが有利
角が0に近いときにはsinで考えるほうが便利と書きましたが、一般の応用としてはcosが大活躍します。
sinとcosとは、対象を前からみるか、横からみるかの違いのようです。
前から見ると複雑にみえることが、横から見ると簡潔にみえることが結構あるのです。
三角関数の応用の一つでよく使われうのが、ある三角形に与えられた角や辺の大きさから残りの角や辺の大きさを求める問題です。
例えば、3つの辺の長さがから三角形のそれぞれの角を計算する事ができるのですが、このときにはcosが大活躍します。
このあたりについては、
に書きました。
ベクトルの内積でもcosが活躍
ベクトルの計算で、内積という計算がありますが、この内積の計算に活躍するのもcosです。
こんな公式をみたことがあると思いますが、cosで定義できます(定理とする場合もあり)。
\(\displaystyle \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b}= | \overrightarrow{a}| |\overrightarrow{b}| \cos {\alpha} \)
このように、内積はcosから計算できます。
sinやcosの定義からみると、sinの方が角と自然に対応するのですが、計算する上で活躍するのは圧倒的にcosになります。
まさに、横から見ると計算しやすくなるというのは、この事です。
三角形を主体に考える問題ではcosが大活躍です。
cosなしに計算なんてできません。
それぐらい活躍します。
三角形に円が絡んでくる場合には、sinを考えたほうがスマートに解決できる可能性位が高いですが、sinだけで解決することはまれだと思います。
もちろん、sinかcosかについては、最終的には取り扱っている問題によりますが、三角形にはcosです!
ひねりの多いcos
三角形にはcosだと書きましたが、超便利なcosであっても弱点があります。
それは、cosの公式にはひねりが入ることが多いのです。
ひねりというのは、プラスマイナスが反転したり、順番に気をつけないといけないということです。
さきほどの倍角の公式でもcosはバリエーションがあります。
加法定理でもcosは符号に注意です。
微分、積分でもそうです。cosを微分するとマイナスがかかります。
ですが、このひねりがうまく調和して、美しい関係式が表現できるわけで、このあたりは数の不思議、神秘性を強く感じるところです。
実は、三角関数は指数関数とも密接に関連していて、解析分野でも大活躍しています。
単に三角形の問題を解くだけの道具ではないのです。
この関数を介して、図形の問題と、代数的な問題が結びついたりして、私も、ここからわずかながら世の中の調和を感じたりしています。
まあ、ここで言いたいのは、cosは変化型が多いということです。
極座標形式では、実部がcos,虚部がsinで表される
変化型の多いcosですが、なんと複素数を極座標形式であらわしたときに実部にでてくるのはcosです。
虚部にはsinがかかっていて、これはこじつけですが、cosは現実、sinは虚構の世界を担当します。
極座標から考えると、cosが正面、sinが横と考えたほうがよいのかな?とも思います。
まあ、どっちが正面でもよくて、sinとcosはお互いを横からみているという印象はかわりません。
まとめ
sinとcosの問題をいろいろ考えていけば、自然とsin、cosの特徴がわかってくると思いますが、これから三角関数に取り組む人の道標になるよう私なりの感じている特徴を書きました。