順序数とは文字通り順番を示す数の事ですが、数学ではもっと特別な意味を持つ数の事を言う場合があります。
これから述べる順序数とは、カントールが考えた順序数の事なのですが、普通の定義をみるとなんだかよくわからない定義に見えます。
というのは、カントールの順序数は集合の記号を使って定義され、基礎知識がないと、その集合の記号の意図するところがとてもがわかりにくいのです。
なぜわかりにくいのかというと、それは集合の集合を使って定義されるからです。
しかし、基礎知識をもって定義を振り返ると、カントールの順序数はそれほど難しい事をいっているわけではありません。
集合の集合
集合を集めて作った集合の事を「集合の集合」と言います。
集合の集合は注意深くよみとかないと、ヘンテコな数式に見えます。
例えば、\(A \in B\)なのに\(A \subset B\)とか、\(A \cup \{A\}\) のように、書き間違えているのではないかと思うような式が登場します。
順序数では集合の集合を含んだ集合が次々とでてくるので、集合の扱いにちょっとした慣れが必要になってきます。
空集合
集合はいくつかの要素が集まってできていますが、特別に要素がない集合も集合と考えます。
この要素がない集合の事を空集合といって、ここでは\(\emptyset\)と書くことにします。
要素のない集合のもう一つの書き方は、\(\{\}\)です。
\(\emptyset\)とかかれていたら、それは、\(\{\}\)のことだと思ってください。
\(\emptyset\)とかくことで中括弧の記号\(\{や\}\)の表示がすくなくなって見やすくなります。
念のために書いておきますが、\(\emptyset\)と\(\{\emptyset\}\)は別の集合です。
\(\emptyset\)は要素が一つもないからの集合\(\{\}\)ですが、\(\{\emptyset\}\)は要素として\(\emptyset\)を持つ集合です。
順序数の基礎
順序数について、まず次の集合の列を頭にいれておくと、よいかと思います。
集合の集合をつかって次々と集合を定義していきます。
ます、\(\emptyset\)です。
つぎに、\(\emptyset\)を要素にもつ集合\(\{\emptyset\}\)です。
さらに、\(\emptyset\)と\(\{\emptyset\}\)を要素に持つ集合\( \{ \emptyset, \{\emptyset\} \}\)を考えます。
以下同様に次々と集合の集合をつかって、新しい集合を作っていきます。
\(\emptyset\)
\(\{\emptyset\}\)
\(\{\emptyset,\{\emptyset\}\}\)
\(\{\emptyset,\{\emptyset\},\{\emptyset,\{\emptyset\}\}\}\)
・・・
この操作が無限に続くのですが、空集合の記号をつかっても括弧が入れ子になって超見ずらいです。
なので、上記の集合は別名を付けます。
すなわち、
\(S_0:=\emptyset\)
\(S_1:=\{\emptyset\}=\{S_0\}\)
\(S_2:=\{\emptyset,\{\emptyset\}\}=\{S_0,S_1\}\)
\(S_3:=\{\emptyset,\{\emptyset\},\{\emptyset,\{\emptyset\}\}\}=\{S_0,S_1,S_2\}\)
・・・
このようにすると、集合の構造が見やすくなります。
専門書では、\(S_1やS_2\)のことを、\(1や2\)と書く場合も多いですが、これだと自然数みたいで集合っぽくないので、ここでは集合であることを強調するために、\(S_1,S_2,\cdots\)と書くことにします。
ただ、あとでわかるように、この\(S_1,S_2,\cdots\)は自然数のようにふるまうので同一視することができます。
まずは、この集合の列を順序数(の一つの例)として覚えておくと、順序数で使われている数式の意味がわかりやすくなります。