数学的帰納法の簡単な変化形
数学的機能法の変化形(1)
まず、簡単にわかるのは、最初のn=1の場合をn=0にしたり、n=2にすることです。
(1) n=2の場合に成立。
(2) n=kの場合が成立するならn=k+1の時も成立する。
(3) 上記の(1)(2)が成立することから、n≧2のすべての自然数に対して成立することが示せた。
数学的機能法の変化形(2)
(1) n=1の場合に成立。
(2) nがk以下の自然数で成立するならn=k+1の時も成立する。
(3) 上記の(1)(2)が成立することから、n≧1のすべての自然数に対して成立することが示せた。
上記とはちょっと違った例を示す。
相加平均相乗平均のを数学的帰納法で証明する
相加平均症状平均の関係とは、
\(n\)個の正の実数a_1,a_2,a_nに対して
\[\frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n} \ge \sqrt[n]{a_1 a_2 \cdots a_n}\]
が成立することです。山のように証明方法があるそうですが、数学的帰納法で証明します。
\(n=2\)の場合は、簡単な式の変形で証明することができますが、\(n\)個になると、式の変形で証明するのはかなり困難です。
(1) n=2の場合を証明する。
(左辺)-(右辺)
\(=\frac{a_1+a_2}{2}-\sqrt{a_1a_2}\)
\(=\frac{a_1+a_2-2\sqrt{a_1a_2}}{2}\)
\(=\frac{(\sqrt{a_1}-\sqrt{a_2})^2}{2}\)
\(\ge 0\)
(2) \(n=2^k\)(kは自然数)の場合を証明する。
ここはkに関する数学的帰納法で証明を記述するの正式でしょうが、ここでは割愛します。
(左辺)
\(=\frac{a_1+a_2+\cdots+a_{2^k}}{2^k}\)
\(=\frac{a_1+a_2+\cdots+a_{2^{k-1}}}{2^{k-1}2}+\frac{a_{2^{k-1}+1}+a_2+\cdots+a_{2^k}}{2^{k-1}2}\)
\(\ge \frac{\sqrt[2^{k-1}]{a_1 a_2 \cdots a_{2^{k-1}}}}{2}+\frac{\sqrt[2^{k-1}]{a_{2^{k-1}+1} a_{2^{k-1}+2} \cdots a_{2^{k}}}}{2}\)
\(\ge \sqrt{\sqrt[2^{k-1}]{a_1 a_2 \cdots a_{2^{k-1}}} \;\; \sqrt[2^{k-1}]{a_{2^{k-1}+1} a_{2^{k-1}+2} \cdots a_{2^{k}}}}\)
\(\ge \sqrt[2^k]{a_1 a_2 \cdots a_{2^{k-1}} a_{2^{k-1}+1} a_{2^{k-1}+2} \cdots a_{2^{k}}}\)
\(=\ge \sqrt[2^k]{a_1 a_2 \cdots a_{2^{k}}}\)
=(右辺)
式がごちゃごちゃしてみずらいですが、n=2の場合を繰り返し使えば、\(2^n\)の場合が証明できることを示しているだけです。
n=4の場合だけ書き直してみます
\( \frac{a_1+a_2+a_3+a_4}{4}\)
\(= \frac{ \frac{a_1+a_2}{2}+\frac{a_3+a_4}{2}}{2}\)
\(\ge \frac{\sqrt{a_1 a_2}+\sqrt{a_3 a_4}}{2}\)
\(\ge \sqrt{\sqrt{a_1 a_2}\sqrt{a_3 a_4}}\)
\(= \sqrt[4]{a_1 a_2a_3 a_4}\)
これで任意の自然数kに対して\(n=2,2^2,\cdots,2^k\)に対して証明できました。
たくさんのnに対して証明ができていますが、これは飛び飛びのnに対して証明されただけにすぎません。
(3) \(n=2^k\)の場合を利用して\(n le 2^k\)の場合を証明する
ここは、式をだらだら書くより、例で示したほうがわかりやすいのでn=5の場合を示します。
\(5 \le 2^{k+1}\)となる自然数kが存在します。この場合、k=2です(もちろん2以上ならなんでもよい)。
\(n=2^3=8\)の場合は(2)で証明されています。
ここで、\(A=\frac{a_1 + a_2+ a_3 + a_4 + a_5}{5}\)とおき、
さらに、\(a_6=a_7=a_8=A\)とおくと、(2)で示した結果から、
\( A=\frac{a_1 + a_2+ a_3 + \cdots + a_8}{8} \ge \sqrt[8]{a_1 a_2 a_3 a_4 a_5 A^3}\)
\( A \ge \sqrt[8]{a_1 a_2 a_3 a_4 a_5 } A^{3/8}\)
\( A^{5/8} \ge (a_1 a_2 a_3 a_4 a_5 )^{1/8}\)
\( A \ge (a_1 a_2 a_3 a_4 a_5 )^{1/5}\)
となって、n=5の場合の相加平均相乗平均の証明ができました。
まとめ
上の相加平均、相乗平均の証明では、n=2を繰り返してn=4の証明を行い、n=4の証明をつかってn=3の証明をしています。同様に、n=4の証明からn=8の証明を行い、n=8の証明をつかって、n=5,6,7の証明をしています。
このような手順で、n=2,4,3,8,5,6,7,16,9,10,11,12,13,14,15,32,17…の順序で相加平均と相乗平均の関係式を証明することができました。\(2^k\)の場合を先に証明して、\(2^k\)より小さい自然数の証明をしています。
注目!
上記まとめでは、「n=2,4,3,8,5,6,7,16,9,10,11,12,13,14,15,32,17…の順序で相加平均と相乗平均の関係式を証明した」と書きました。もちろん、これはこれでいいのですが、必ずしもこの順序でなくてもよいことがわかります。例えば、n=2,4,8,16,32,3,5,6,7,9,10,11,12,13,14,15,17,…の順序でも証明ていることがわかります。先に、n=32の場合を証明すると、32より小さい自然数nに対しては証明できるからです。
本質的に数学的帰納法が聞いているのは、
任意の自然数kに対して、\(n=2^k\)とおくと、「\(\frac{\sum_{j=1}^{n}a_j}{n} \ge \sqrt[n]{\prod_{j=1}^n a_j} \)が成立」を証明することになっています。こちらは、kに注目してみると小さいほうから順序よく証明していることになります。
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