極限は数列の行き先であるから、発散する数列を無限大として扱う考え方は、自然である。
数列の演算では、割り算がうまく定義できなかった。
したがって無限大の比の計算に難があった。
これを回避するために、0を含まない数列だとか、項がすべて正だとか条件をつけて回避しようとすると、今度は可算・減算がうまくいかない。
それで、この演算に関する問題は先送りするとして、割り算ができる数列だけを取り扱って見た場合、どのような振る舞いになるのかここで、調べてみようと思う。
無限大÷無限大
極限の問題で無限大÷無限大の形式になっている場合がある。
その極限は、ある有限値であったり、発散したりして特定の値に定まらないため不定といわれている。
これは、無限大には大きい無限大と小さい無限大、それと同じくらいの無限大があるということを意味しているのであろうか?
たとえば、<無限大1>÷<無限大2>=2となった場合、<無限大1>は<無限大2>の2倍の大きさの無限大と考えてよいのであろうか?
よくある極限の問題で次の数列の極限を考える。
\[\lim_{n→∞} \frac{2 \cdot 3^n}{1+3^n}\]
これは、2・3nと、3n を二つの無限大(数列)と考えた時、無限大÷無限大の形の式である。
解析では、上記の極限は収束し、その収束値は2と計算される。
ということは、n→∞としたとき、2・3nは、3n より2倍大きな無限大に発散していると考えるのが妥当だろうか?
二つの選択
私の結論から述べよう。
無限大÷無限大には少なくとも2つの考え方に分けられる。
一つは、上記の数列の無限大に対して、「(1)無限大÷無限大=2」とする方法、
もう一つは、上記の数列の無限大に対して、「(2)無限大÷無限大=1」とする方法である。
後者はどういう考え方かというと、無限大はどれをとっても無限に大きいので、同じぐらいの大きさと考え、したがって比をつねに1と固定する考え方である。
これらは、数の作り方に関わる問題であるので、どちらが正解でどちらか誤っているといった排他的な問題にはなっていない。(無限大を含んだ)数の作り方によって、どちらかが選ばれるということである。
一般的に極限の式を表している式では、無限大÷無限大は「無限大に発散する列と無限大に発散する数列の比で作った数列は収束もするし発散もする」という意味で不定だ。これは、比をとってからその極限を求めた場合だ。極限値の比ではない。
無限大に発散している極限状態で比をとったらどうなるのかは別問題である。
ということは、無限大÷無限大を常に1とした考え方もありうると言う事である。
まとめ
- 無限大÷無限大は不定であるというのは極限値の話。
- 数列で表した無限大は、割り算をきちんと定義することができていないので、数列で表した無限大はまだ数として昇格していない(昇格できていない)。
- 数として昇格していないので、無限大÷無限大を極限値で代用(定義)する必要性はない。
- 無限大÷無限大=1と固定にする考え方もできる。
次回は、無限大÷無限大=1の世界を考えます。
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