2つの集合が同じ証明

 

2つの集合が同じであることを証明する例題です。

この例題を通して、2つの集合が等しいことを示す問題の解き方を考えます。

 

問題

3で割り切れて、10でも割り切れる整数の集合をMとする。

5で割り切れて、6でも割り切れる整数の集合をNとする。

このとき、M=Nであることを証明せよ。

 

問題の解釈

NとMを数学の記号で書くと、

Nは

{x |  xは3で割り切れる かつ 10で割り切れる整数}

 

Mは

{x | xは5で割り切れる かつ 6で割り切れる整数}

となります。

 

この例題は、

2つの数の集合NとMが等しい集合

であることを示す問題です。

 

素因数の性質

なお、ここでは整数の基本性質である素因数の知識を前提とします。

 

ここでいう素因数分解の性質とは、

「ある整数aが10で割り切れるとき、その整数aは10の素因数2と5でも割り切れる」

という性質と

逆に、

「ある整数aが2と5で割り切れるとき、その整数aは2×5=10でも割り切れる」

という性質です。

 

これはきちんと証明が必要な性質ですが、

当たり前と思うぐらいよく知られている簡単な性質でもありますので、

既知の知識として利用しています。

2や5が素数であるということには注意してください。

 

 

2つの集合NとMが等しいとは

2つの集合が等しい事を証明するには、お互いがお互いを含んでいる事を示します。

すなわち、ここでの例でいうと

N⊂M と N⊃M
の2つの包含関係を示すことです。

 

包含関係が成立するとは

N⊂Mを示すには、

「Nから任意の要素xを持ってくると、xはMの要素でもある。」

数学の記号でこれを書き直すと、

「x∈Nとすると、x∈Mである。」

となります。

 

もし逆の包含関係、N⊃Mを示すことができれば、

N=Mが示されたことになります。

 

 

ある集合を媒体にして等しい事をしめす

N=Mを直接示すことが難しい(ややこしい)としても、

ある別の集合Lを作ると、

N=L、M=Lを示す事は簡単にできる場合があります。

もし、

このような集合Lを見つけることができれば、

三段論法によって、

N=L=Mを示したことになります。

 

ここの例では、

 

例えば、

集合Lを

{x | xは30で割り切れる整数}

とすると、

M=LとN=Lを示すことができます。

 

 

 

解答例A

まず、N⊂Mを示す。

そのために、x∈Nとすると、

xはNの定義より、

3で割り切れて(※1)、

10でも割り切れる。

 

10を素因数分解すると、

10=2×5であるから、

xが10で割り切れるということは、

2でも5でも割り切れる(※2)ことを意味する。

これら(※1)(※2)をまとめると、

x∈N なら、

xは2と3と5で割り切れる整数

ということになる。

 

xは2と3で割り切れるから、6でも割り切れる(※3)。

(※3)(※2)から、xは6でも5でも割り切れるので、

 

x∈Mである。

 

これで、

N⊂M

を示すことができた(※あ)。

 

 

次に逆の包含関係、

M⊂N

を示す。

そのために、

y∈M={x | xは5で割り切れる かつ 6で割り切れる整数}

とすると、

yはMの定義より、

5で割り切れて(※4)、

6でも割り切れる。

 

6を素因数分解すると、

6=2×3であるから、

yが6で割り切れるということは、

2でも3でも割り切れる(※5)ことを意味する。

これら(※4)(※5)をまとめると、

y∈M なら、

yは5と2と3で割り切れる整数

ということになる。

 

yは2と5で割り切れるから、10でも割り切れる(※6)。

(※6)(※5)から、yは3でも10でも割り切れるので、

 

y∈Nである。

 

これで、

M⊂N

を示すことができた(※い)。

 

(※あ)(※い)より、N=Mである。

 

解答例B

集合Lを

{x | xは30で割り切れる整数}

とする。

やり方は、解答Aと同じになるので

ここで冗長にかくのをやめて証明を省略しますが、

N=LとM=Lを示すことができます。

これによって、N=Lを示すことができます。

 

解答例Bから証明方法の考察

解答例Aも解答例Bも証明で使っている道具(素因数の性質)は同じです。

解答例Bは解答例Aより、

集合Lが登場している分、

めんどうさが増えたようにも見えます。

 

しかし、集合Lを発見することによって、

集合Kを

{x | xは2で割り切れる かつ15で割り切れる整数}

とした時、

N=K、M=K、を証明するときの手助けにもなります。

 

そして、集合Lの定義で出てくる、30という数がどういった性質の数なのか考察することでより深い理解が得られる証明だといえます。

 

つまり、集合N、M、Kがそれぞれ等しい事を示すときには、

解答Bの方法がすっきりと見通しよくなります。

 

 

ここでの例題は簡単な例なので、解答例Aも解答例Bもそれほど違いはありませんが、

2つのものが等しいことを示すときに解答例Bが威力を発揮することが多々あります。

 

例えば、「同じ弧に対する円周角は等しい。」

この命題の証明では、中心核を媒体とすることで、簡単に証明が完了します。