数式の展開に時間がかかります。ご容赦ください。
先に、結論となる公式を書いておきます。
b≧0の時
\(\displaystyle \sqrt{a+bi}\\=\pm \left( \sqrt{\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}} + \sqrt{\frac{-a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}i} \right)\)
b<0の時
\(\displaystyle \sqrt{a+bi}\\=\pm \left( \sqrt{\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}} – \sqrt{\frac{-a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}i} \right)\)
複素数にも平方根(ルート)がある
通常、ルートの中は正の実数です。すなわち\(\sqrt{3}\)、\(2\sqrt{5}\)のような使い方です。
√iや、\(\sqrt{2-3i}\)のような複素数の平方根はどうやって考えるとよいのでしょうか。
平方根(ルート)とは
複素数aがbの平方根であるというのは、\(a^2=b\)が成立していると言うことです。
逆に、二つの複素数\(a,b\)が\(a^2=b\)という関係を満たしている時、複素数\(a\)は\(b\)の平方根と呼びます。
通常、平方根(ルートの記号√)は正の実数もしくは0に対して使用します。
0は例外ですが、実数の時と同様に複素数に対しても平方根は2つあります(代数学の基本定理)。
実数\(b\)に対して二つの平方根がありますが、そのうちの一つを\(\sqrt{b}\)で表します。
ただし、\(b \gt 0\)の場合は、二つの平方根のうち一つは必ず正のものになりますので、この場合に関して、\(\sqrt{b}\)は暗黙的に正の方を表しているのが慣例です。
ここでの問題は、\(a+bi\)の平方根すなわち\(\sqrt{a+bi}\)がどんな数なのか複素数形式で表すことです。
なお後で、具体的な数値を使った計算例を通して求めた平方根が正しいかどうかの検証も行います。
複素数の平方根を求めます
さて、改めて問題を書き表します。
与えられた\(a+bi,(a,bは実数とする)\)に対して、\((c+di)^2=a+bi\)となる実数\(c,d\)を求めよ。
この問題を解きます。まず、左辺を展開し、
\(c^2-d^2+2cdi=a+bi\)を得ますから、下記の連立方程式を解けば答えが求まります。
\[\left\{
\begin{align*}
c^2-d^2=a\\
2cd=b
\end{align*}
\right.\]
\(b=0\)の場合は、実数の平方根を求めることと同じですから、\(b \ne 0\)として考えます。つまり、\(c \ne 0\)として考えます。
\(d=b/(2c)\)をつかって、\(d\)を消去すると、
\(c^2-b^2/(4c^2)=a\)
\(4c^4-4ac^2-b^2=0\)
これを\(c^2\)に関する2次方程式とみなして解くと、解の公式から、
\(c^2=\frac{a \pm \sqrt{a^2+b^2}}{2}\)
cは実数であるから、\(c^2\gt0\)であることに着目すると、
\(c^2=\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}\)
∴\(c=\pm \sqrt{\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}} \)
\(d=\frac{b}{2c}\\=\frac{\pm b}{ \sqrt{2(a + \sqrt{a^2+b^2}) }}\)
これでc,dが求まりましたが、分母に根号があってどうも使いにくい形をしているので有理化します。
ここで符号の調整が必要になってきます。\(bc \gt 0\)とすると、
\(d= \sqrt{\frac{b^2}{2(a + \sqrt{a^2+b^2})}} = \sqrt{\frac{-a + \sqrt{a^2+b^2}}{2} } \)
と書き直すことができ、\(b\ne 0\)の時の平方根が下記の形式で2組求められました。
\(c+di=\\\pm \left( \sqrt{\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}} \pm \sqrt{\frac{-a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}i} \right)\)
(ここで符号の取り方は、a,bの符号によって制限されます)
\(b=0\)の場合の平方根も簡単に求められます。
\(a \ge 0,b=0の時、c+di=\sqrt{a} \)
\(a \lt 0,b=0の時、c+di=\sqrt{-a}i \)
\(b=0\)の場合も\(b \ne 0\)の場合の式と同じ形にまとめることができます。
複素数の平方根を求める公式
複素数の平方根の結果をまとめると公式が完成します。bの符号によって場合分けして下記に示します。
再度掲載しておきます。
b≧0の時
\(\sqrt{a+bi}\\=\pm \left( \sqrt{\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}} + \sqrt{\frac{-a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}i} \right)\)
b<0の時
\(\sqrt{a+bi}\\=\pm \left( \sqrt{\frac{a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}} – \sqrt{\frac{-a + \sqrt{a^2+b^2}}{2}i} \right)\)
具体的な例で計算して正しく求められているか確認
例1)\(\sqrt{i}\)の例
a=0,b=1の場合であるから、
\(\sqrt{a+bi}=\pm \left( \sqrt{\frac{0 + \sqrt{0+1}}{2}} + \sqrt{\frac{-0 + \sqrt{0+1}}{2}i} \right)\)
\(=\pm \left( \sqrt{\frac{1}{2}} + \sqrt{\frac{1}{2}i} \right)\)
∴\(\sqrt{i}=\pm( \frac{\sqrt{2}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2}i)\)…答え
これが答えです。
答えがただしいか確認するために、求めた答えを2乗して元の数に戻るか調べます。
\(( \frac{\sqrt{2}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2}i)^2=\frac{2-2+4i}{4}=i\)
となり、正しく平方根が求められていることがわかりました。
例2)\(\sqrt{-3+4i}\)の例
a=-3,b=4の場合であるから、
\(\sqrt{-3+4i}=\pm \left( \sqrt{\frac{-3 + \sqrt{9+16}}{2}} + \sqrt{\frac{3 + \sqrt{9+16}}{2}i} \right)\)
\(=\pm \left( \sqrt{\frac{2}{2}} + \sqrt{\frac{8}{2}}i \right)\)
∴\(\sqrt{-3+4i}=\pm( 1+2i )\) …答え
答えを確認します。\((1+2i)^2=-3+4i\)となるので正しく求められていることがわかりました。
例3)\(\sqrt{2-3i}\)の例
a=2,b=-3の場合であるから、
\(\sqrt{2-3i}=\pm \left( \sqrt{\frac{2 + \sqrt{4+9}}{2}} – \sqrt{\frac{-2 + \sqrt{4+9}}{2}i} \right)\)
∴\(\sqrt{-3+4i}= \pm \left( \sqrt{\frac{2 + \sqrt{13}}{2}} – \sqrt{\frac{-2 + \sqrt{13}}{2}i} \right) \)…答え
答えを確認します。\(( \sqrt{\frac{2 + \sqrt{13}}{2}} – \sqrt{\frac{-2 + \sqrt{13}}{2}i})^2=2-3i\)となるので正しく平方根が求められています。
コメント
結果からみてわかるように、一般の複素数の平方根は2重根号で求めることになります。
複素数の平方根高校で教えるはずなのに実際には教えていませんこれでは複素数
係数の二次方程式は計算できませんよくわかりました。
特に断りがない場合は、√(ルート)の中の数は正の実数もしくは0です。
√(ab)=(√a)(√b)の公式もa,bが負の数の場合は成立しません。
時折、√(-1)とか、√(-2)などと負の数が書かれている場合もありますが、こういう場合は注意深く検証する必要があります。
ですが、実際には注意深く検証しなくても混乱することがないので、この事はおざなりになっています。