実数はゼロを除けば正か負のどちらに分類され、
正の実数はプラスの符号「+」、
負の実数にはマイナスの符号「-」がつけられます。
数の符号とは
符号は数の前に表記します。
例えば、「+2」のように2の前に「+」を書いた場合、これは正の実数であるこをと意味しています。
同様に、「−2」と書いた場合、符号は−ですから、これは負の実数を表しています。
単純に「2」と買いた場合は、「+2」と考えます。
このように、符号は数字前に、「+」や「-」の記号をつかって表し、その数が正(プラス)なのか負(マイナス)なのかを示しています。
負の数を表す符号として、「-」ではなく「▲」という記号を使うこともあります。
例えば、「-2」のことを「▲2」と書きます。
この三角の記号は実際に決算書などで使われることがあります。
また、正の数の符号として「+」と代わりに「△」を使う例もあります。
プラス記号、マイナス記号の代わりに、白三角と黒三角で符号を表しているわけです。
符号は実数(整数や分数も含む)に対して使われ、
複素数に対しては使いません。
複素数に対する符号の考え方はここでは省略します。
符号と足し算引き算の記号
「3+2」という足し算の式がありますが、ここでの「+」は足し算の記号です。
この式は、「3」(符号をつけて書くと「+3」)という数と「2」(符号をつけて書くと「+2」)という数を足すという意味の式です。
符号を省略しないで先ほどの足し算の式を書くと、
「(+3)+(+2)」
となります。
符号を含めて一つの数を表しているため、「+」が符号であることがわかるようにかっこでくくって記述します。
三角の符号でかくとしたら、かっこでくくらなくても混乱はないため、
「△3+△2」
とかけます。
もちろん、
「(△3)+(△2)」
とかっこで括って書いても、意味は通じます。
かっこを駆使すれば、符号の記号か演算(足し算や引き算)の記号かは区別がつきます。
混乱もありません。
むしろ、慣れの問題ですが、△のような記号をつかったほうが混乱するぐらいです。
符号をとった部分は絶対値
負の数を知っている人であれば、符号については特に難しい部分はないと思います。
数は符号を持っている、これはよいとして、さて数から符号を除いた部分はなんというのでしょうか?
特に、名前はついていませんが、数には、絶対値という値があるので、ここでは符号を取り除いた部分を絶対値とよぶことにします。
長さと呼ぶこともあります。
例えば、数「+2」の例でいうと、符号は「+」で絶対値は「2」ということになります。
同様に、数「-2」の例でいうと、符号は「-」で絶対値は「2」
注意すべき点ですが、絶対値は常に正です。ゼロは例外ですが。
ゼロは符号ももたない特別な数です、便宜上ゼロの絶対値はゼロと約束します。
ゼロも含めて考えると、数の絶対値はゼロまたは正の実数となります。
マイナス1を掛けると符号が反転する
負の数の計算ができる人であれば、わかっていることですが、-1を数に掛けると符号が反転します。
反転するというのは、「+(プラス)は-(マイナス)」、「-(マイナス)は+(プラス)」と別の符号に入れ替わるという意味です。
そして、
数の前に、マイナス記号を書いて、マイナス1を掛けるという意味にします。
たとえば、-(+2)は、(-1)と(+2)をかけた式の意味をも表します。
-(+2)は、-2と同じです。
-2と書いた場合、これはある一つの負の数を表しているのですが、一方、-1と2を掛けた数であるとも解釈できます。
どちらで解釈しても、矛盾がないのが数の便利なところです。
文字式などで、-aといった式がでてきますが、これはaに-1を掛けた数という意味です。
符号のように数の前にマイナスがついているからといって、-aが負の数を表しているとは限りません。
負の数の計算はなんなくできたとしても、
文字式になると、いくらか抽象的になって、このあたりで計算の混乱が生じるかもしれません。
-aの絶対値をaと答えた人は、-aのマイナス記号を符号だと勘違いしてるのかもしれません。
実は、このマイナス1の性質のおかげで、数の符号という考え方の意識が薄れているといえます。
「数の前に-をつけること」を「-1を掛けた数」とみなすと、-記号は符号以上の働きをします(符号が反転できるので)。
これに、「+」の符号は省略可能という約束とあわせること(もしくは符号の+を1を掛けた数とみなすこと)で、数にいちいち符号を書きあわわす必要がなくなるのです。
ですから、符号と足し算引き算の記号は同じですが、混乱はなく、むしろ便利になります。
負の数とは
ここで、念のために注意書きをしておきます。
正の数に-1(マイナス1)をかけたものが負の数でしょうか?
結果的には負の数ですが、これは負の数の定義ではありません。
なぜなら、マイナス1自体が負の数だからです。
負の数であるマイナス1を使って負の数を定義することはできません。
それは、定理を使ってそれ自身の定理を証明しているようなものです。
もともとの負の数とは、引き算ができるように自然数を拡張した数です。
まずは、符号をつかって自然数を拡張した整数を作りました。
この時点で符号は重要な働きを行います。
整数は負の数を含んでいます。とくに、-1も含んでいます。
また、負の整数は、正の整数と-1倍で対応がついています。
こう考えると、符号が必要になるのは、整数を構築するまであれば十分で、
負の有理数や負の実数は、(負の数を含んでいる)整数を使って定義していけば符号は不要です。
数にとって、もはや符号という属性はそれほど重要なものでないといえます。
まとめ
- ゼロ以外の実数は正または負に分類され、符号で区別される。
- 実数の符号を取り除いた部分は、絶対値と呼び、それはゼロまたは正の実数で表される。
- 文字式では符号をうまく取り扱えないが、-1を掛ける式はうまく文字式で処理できる。
- 数の前に-記号をつけるのを、その数に-1を掛けた数と同一視することで符号を書く必要がなくなる。
- 式のなかに符号が記述されることはほとんど不要なので、符号と足し算引き算は区別され混乱も生じない。
ここでの数の対象は実数ですが、この話を複素数に発展させることができます。
注意1:極限にでてくる+0や-0の+,-は符号の記号ではない!
余談ですが、解析の極限式で+0や-0といった記号が使われることがあります。
この+0は正のゼロを意味しているわけではなく、同様に-0も負のゼロを意味しているわけではありません。
極限にでてくる+0は、正の実数をつかって0に近づけるという意味です。
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