解の公式にでてくる3乗根
3次方程式の解の公式にでてくる3乗根の取扱はちょっと注意があります。
通常のルート記号の使い方ですが、ルートの中身は正の実数です。つまり、\sqrt{a}
と書いてあった場合、a\le 0
と仮定されているのが普通です。
ルートの中が正の実数の場合は、正の実数でべき乗根がただ一つ存在するので、それを\sqrt[n]{a}
のような書き方で表しています。
ところが、解の公式の3乗根のルートの中は、正の実数とは限りません。一般の複素数の3乗根です。つまりは、3乗してルートの中になる数の一つを示しているだけです。
普通のルートの記号を拡張したような感じで使用されていますが、特定の一つの数を指しているわけではなく、3個ある数のなから適当に選んだ数を指しているのです。
代数学の基本定理から、3乗してルートの中になる数は必ず存在します。それも複素数の範囲で考えると3つあります(例外的に3乗して0になる数は複素数で考えても0しかありませんが)。
存在が保証されていますので、3乗根の記号を使う分にはかまわないのですが、一意に定まった数を指しているわけではないという点を注意しなければならなのです。
以下、場合分けしていろいろなタイプの3乗根を求めてみます。
1の3乗根
0を除くと、簡単に求められる3乗根は、1でしょう。
x^3=1
この3次方程式の解が1の3乗根となります。この式は因数分解できますから、xを求めることができます。
x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)=0
を解けばよいのですから、1の3乗根は、
1,\frac{-1+\sqrt{3}i}{2},\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}
の3つです。2次方程式の解の公式を使いました。
w=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}
で表すことにすると、1の3乗根は、1,w,w^2
の3個と表すこともできます。
このwはこの後もででてくる数ですので、ここで特別な文字に置き換えました。
正の実数の3乗根
次に、aを正の実数として、aの3乗根を求めてみます。
x^3-a=0
の解がaの3乗根になりますが、その内の一つを\sqrt[3]{a}
で表すことにすると、aの3乗根は、\sqrt[3]{a},w\sqrt[3]{a},w^2\sqrt[3]{a}
ですべて求めることができます。
wは1の3乗根のところで出てきたwと同じ数です。
解を使って因数分解すると次のようになります。
x^3-a=(x-\sqrt[3]{a})(x-w\sqrt[3]{a})(x-w^2\sqrt[3]{a})
負の実数の3乗根
次に、aを負の実数として、aの3乗根を求めてみます。
x^3-a=0
を解くところは同じでその一つの解を、\sqrt[3]{a}
で表したいのですが、\sqrt[3]{\;\;}
の中のaが負です。
この場合の\sqrt[3]{a}
は、3乗してaになる数(3個ある)のうちの一つを表していますが、必ずしも実数の3乗根を表しているわけではありません。
くどいようですが、具体的な例で説明しますと、
3乗して-8になる数は複素数の範囲で考えると3つあります。
それぞれ、-2,-2w,^2w^2です。
\sqrt[3]{-8}
と書いた時、これが-2であるとは限らないということです。
\sqrt[3]{-8}
は3乗して-8になる数の一つですから、-2,-2w,^2w^2
のどれか一つであって、-2の場合も含んではいますが、それだとは限らないということです。
ただし、(-1)^3=-1
であるので、\sqrt[3]{-a} (ここではa \gt 0の実数とする)
を-\sqrt[3]{a}
の意味で書かれている可能性も十分にあります。
つまり、\sqrt[3]{-8}=-2
の意味で使われている場合もあり得ます。どういう意味で記号が使われているかは、文章の流れで判断するしかありません。
複素数の3乗根
次に、aを一般の複素数として、aの3乗根を求めてみます。
x^3-a=0
を解くところは同じで、その解の一つ\sqrt[3]{a}で表すと因数分解も同じように
x^3-a=(x-\sqrt[3]{a})(x-w\sqrt[3]{a})(x-w^2\sqrt[3]{a})
となりますから、解は、\sqrt[3]{a},w\sqrt[3]{a},w^2\sqrt[3]{a}
似たような記号でわかりにくいので、ここでも例をだします。
16+16iの3乗根ですが、
x^3-16-16i\\=(x+2-2i)(x+w(2-2i))(x+w^2(2-2i))
より、
x=-2+2i,w(-2+2i),w^2(-2+2i)
となりますが、\sqrt[3]{16+16i}
が、どの解を指しているかは特定されていません(特に指定していないので)。
3次方程式の解の公式にでてくる3乗根
3次方程式の解の公式が示す解は、
\sqrt[3]{u}+\sqrt[3]{v}
の形をしています。ここで説明したように、一般の複素数u,v
の3乗根はそれぞれ(重複を考えて)3個あります。
解の公式にでてくる、\sqrt[3]{u}+\sqrt[3]{v}
の値として考えられる組み合わせは、9通りあることになりますが、その9通りがすべて解であるわけでなく、-3\sqrt[3]{u}\sqrt[3]{v}=a
となる\sqrt[3]{u}と\sqrt[3]{v}
の組み合わせだけが解として採用されるということです。
まとめ
- aが正の実数の場合、\sqrt[3]{a}は正の実数の3乗根を表すが、aが正の実数とは限らない場合、\sqrt[3]{a}は3乗してaとなる複素数のどれか一つを表す。
- 一般にaが実数でも、\sqrt[3]{a}は実数を表しておるとは限らない。
- 3乗してaとなる複素数は、(重複も含めると)3個あるがそのうちの一つを\sqrt[3]{a}
で表すと、残りの2つはw\sqrt[3]{a},w^2\sqrt[3]{a}
で表される。
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