積分の式は、\(\displaystyle \int(xの関数)dx\)という形で書かれます。

この\(\int\)と\(dx\)の記号は慣れないとなかなか読み解けないものです。

記号の意味や解釈はいろいろありますが、ここでは初心者向けに記号の意味を説明します。

まず、\(\int\)部分ですが、これは積分の記号です。

これはいいですね。

新しい概念である積分のために新しい記号を導入したわけです。

問題は、最後に記載される\(dx\)の部分です。

なぜ、わざわざ\(dx\)を最後に付ける必要があるのでしょうか。

変数\(x\)で積分することを表すために最後に\(dx\)を付けるという説明もよく見かけます。

それも理由の一つだと思います。

しかし、それにしてもなにかもっと深い意味がありそうですよね。

\(dx\)の\(x\)の部分はともかく、\(d\)が付くところ、なんか理由があるはずです。

なぜなら、微分の記号でもこの\(d\)が登場するからです。

微分と積分は深い関係があります。

この\(dx\)は微分の記号ででてくる\(dx\)となにか関係があるはず。

そう思うと、その意味についてもっと深く知りたくなってくるでしょう。

微分の記号の復習

関数\(y=f(x)\)があったとします。

この関数の微分(導関数)を表す記号は、\(y’やf'(x)\)のようにダッシュ記号「’」を付けたり、\(\frac{d}{dx}f(x)\)のように関数の前に\(\frac{d}{dx}\)という記号を付けます。

\(\frac{dy}{dx}\)という記号もよく使います。

微分を習いたての頃、 \(\frac{dy}{dx}\) はyをxで微分した式(導関数)を表す記号だと教わったと思います。

ダッシュを付ける記法はシンプルですが、後者の記号はどうみても\(dx\)と\(dy\)の分数みたいな記号です。

微分の記号については、下記に書いたのでここでは省略します。

∫f(x)dxの意味について

少し、話が脱線してしまいましたが、本題に戻ります。

まず、その式の心の中での読み方です。

音声としての読み方は、インテグラル エフエックス ディーエックス でよいでしょう。

ただ、心の中では、

  • \(\int\)の部分は、「総和」
  • \(f(x)\)の部分は、「積分する関数」
  • \(dx\)の部分は、「xの無限小量」

と読みます(解釈します)

不定積分より、定積分の方がイメージでとらえることができるので定積分で説明します。

\(\displaystyle \int_a^b f(x) dx\)

この定積分は、下記の図のように、短冊の面積で近似されます。短冊の横幅を限りなくゼロに近づけたのがdxです。

aからbまでのf(x)の積分のイメージ

積分は、微分の逆演算と考えることもできますが、本来はこの短冊の面積の総和という考え方が合っているのです。

あ、短冊というのは、図の細長い長方形のことです。

代表として、黄色い短冊を選んでいますが、aからbの間の短冊の面積の総和が定積分になります。

限りなくゼロに近い(ゼロではありません)横幅の短冊がたくさんあるとイメージします。

dxというのは、短冊の横幅の長さです。

すると、代表で選んだ短冊の面積は、高さ\(f(x)\)、横幅\(dx\)の長方形ですから\(f(x)dx\)がそれになります。

\(x\)を\(a\)から始めて\(b\)に到達するまで変化させたときにできる短冊の面積の総和がこの定積分の値です。

一つ一つの短冊の面積は、\(f(x)dx\)であらわされ、その総和ということで式の頭に\(\int\)を付けて

\[\int_a^b f(x) dx\]と書き表しているのです。

ということで、結論をいうと、\(dx\)は短冊の横幅を意味しているということになります。

Σと∫

∫は総和と書きましたが、総和の記号でΣというのがあります。

この二つの記号は意味が似ています。

気持ちとしては、∫はΣの連続版といった感じになっています。

まず、一般的に

\(\displaystyle \sum_{i=1}^{n} g(x_i)\)は

\(i\)を\(1\)から\(n\)まで変化させたときの\(g(x_i)\)の総和という意味です。

\(\displaystyle \int_a^b f(x) dx\)の場合は、
\(x\)を\(a\)から\(b\)まで変化させたときの\(f(x)dx\)の総和とみなします。

\(x\)は\(a\)から\(b\)まで変化させるのですが、ちょっとの\(dx\)ずつ増やしていると考えます。

つまり、

\(x_0=a\)
\(x_1=a+dx\)
\(x_2=a+2\ dx\)
\(x_3=a+3\ dx\)

\(x_n=b\)
というふうに\(x_k\)を定めて

先ほどのΣの式を無理やり展開して書くと、

\(\displaystyle f(x_1) dx+f(x_2) dx+f(x_3) dx+…+f(x_n) dx\)

となります。

ここで、\(dx\)というのはいわゆる無限小だと思ってください。

極限の記号を使うともう少し正確に記述できます。

\(x_n\)を上記で定めたようにとると、

\(\displaystyle \int_a^b f(x) dx \)は

\( \displaystyle \lim_{n→∞} \sum_{k=0}^{n} f(x_k) \frac{b-a}{n} \)

と同じです。

両者の式を比較すると、\(dx\)のニュアンスが伝わってきます。

\(n→∞\)としたときの\(\frac{b-a}{n}\)の部分が\(dx\)になります。

特に、\(a=0,b=1\)とすると、

\(\displaystyle \int_0^1 f(x)dx = \lim_{n→∞} \sum_{k=0}^{n} f(x_k) \frac{1}{n}\)

です。

\(dx\)の正体は、\(\displaystyle \frac{1}{n}\)です。

dxの闇

これまでの説明で\(dx\)を非常に小さいゼロでない実数のような扱いとして書いてきました。

あたかも、

\(\displaystyle dx=\lim_{n→∞}\frac{1}{n}\)であるかのように書いています。

しかし、実際に、非常に小さいゼロでない実数というのは存在しません。

存在しているような錯覚に陥ることもありますが、存在していると仮定するといろいろな問題が発生してきます。

ここまで書いた説明でも、いろいろと問題となる式を書いてきました。

気持ちとしては、\(dx\)は無限小と考えてかまいませんが、無限小という実数は存在しない(簡単に定義することが困難)なため、最初はそこを避けて学習することが一般的なのです。

また、結果的に微分と積分は逆の演算(作用)でありますが、これを逆手にとって、積分の定義を短冊の総和ではなく、微分の逆演算として教えることも多いです。

これは微分と積分の関係を表す意味としてはわかりやすくなりますが、

微分の逆演算として積分をみると、∫や\(dx\)の記法が奇異な感じになってしまいます。

これはいたしかたありません。

私は、これをdxの闇と呼んでいます。

なお、インテグレーションといえば、「まとめる」とか「集積する」という意味ですね。

語源から考えても、インテグラル記号∫は総和と読み替えてもそうおかしくはありません。

ただ、一般的には総和というとΣの方になりますので、そこは注意しましょう。

ついでに、∫の記号、これはエクセルで総和を意味するSum関数の頭文字「S」を上下に引き延ばした形になっていますね。

∫ の記号が、総和の意味を込めて作られている証です。