3次方程式には、3次方程式解の公式が存在します。
ところが、この解の公式は期待はずれなほど使い物になりません。
2次方程式の解の公式は、めちゃめちゃ便利に使えたのに、なぜ3次になると役に立たなくなるのでしょうか。
解の公式は、実数解を求める時でも複素数計算が必要
簡単にいってしまえば、3次方程式の解の公式は、実数解を求めるためであっても複素数計算が必要になるからです。
複素数の計算がそんなに難しいとはどういうことだろうかと思うかもしれません。
たしかに、複素数の加減乗除はそれほど複雑ではありません。
面倒かもしれませんが、楽々計算できます。
問題は、3乗根を求める場合です。
実数の3乗根を求めるのと複素数の3乗根を求めるのとは次元が異なるぐらい難しさが違います。
もちろん、近似値計算なら両者とも同じようなアプローチの手法が使えます。
しかし、3次方程式の整数解や有理数解があるかどうかについて解の公式を利用して調べようとしても、うまくいかないのです。
たとえ解が有理数であったとしても、解の公式では忌まわしい複素数の3乗根を求める計算が途中にあり、それが邪魔するのです。
つまり、整数解や有理数解について調べるために解の公式は役立たずです。
この場合は、係数の約数や因数定理を活用して調べた方がはるかに効率的になのです。
「因数定理をつかって3次方程式を解くなんてめちゃめんどくさい」、
「解の公式を使って確実に解を求めたい!」と思っても、
解の公式から実際の解を計算する方法は、因数定理を使う方法よりも、比べ物にならないぐらい面倒な計算を引き起こします。
もちろん、解の公式でうまくいく場合も多数あります。
しかし、例えば
\(\displaystyle x^3-4x^2-17x+60=0\)
の解を解の公式をつかって求めようとすると、まず撃沈します。
3乗根のルートがなかなか消えてくれない状態におちいるからです。
役にたちません。
3乗根のルートの中も複素数です。
これが本当に実数解になるのかどうかすら皆目検討がつかない複雑さです。
素直に因数を地道な方法でみつけて解く事がこの手の問題には有効なのです。
ちなみに、この例の解は、
\(\displaystyle x=-4,3,5\)
となっています。
定数項の約数からすばやく、\(\displaystyle x=3\)を見つけると、残りの解も簡単に導けます。
解の公式をつかってこの方程式にアプローチすると、奈落の底に落ちてしまいます。
三次方程式の解の公式を使って試してみる
xについての三次方程式
\(\displaystyle ax^3+bx^2+cx+d=0\)
の解は、下記のように表すことができます。
これがいわゆる三次方程式の解の公式です。
\(\displaystyle \\ x=\left({{\sqrt{27\,a^2\,d^2+\left(4\,b^3-18\, a\,b\,c\right)\,d+4\,a\,c^3-b^2\,c^2}}\over{2\,3^{{{3}\over{2}}}\,a^ 2}}-{{27\,a^2\,d-9\,a\,b\,c+2\,b^3}\over{54\,a^3}}\right)^{{{1 }\over{3}}}\\ -{{3\,a\,c-b^2}\over{9\,a^2\,\left({{\sqrt{27\,a^2\,d^2+ \left(4\,b^3-18\,a\,b\,c\right)\,d+4\,a\,c^3-b^2\,c^2}}\over{2\,3^{ {{3}\over{2}}}\,a^2}}-{{27\,a^2\,d-9\,a\,b\,c+2\,b^3}\over{54\,a^3}} \right)^{{{1}\over{3}}}}}-{{b}\over{3\,a}} \\ \) \(\displaystyle \\ x=\left({{\sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right) \,\left({{\sqrt{27\,a^2\,d^2+\left(4\,b^3-18\,a\,b\,c\right)\,d+4\,a \,c^3-b^2\,c^2}}\over{2\,3^{{{3}\over{2}}}\,a^2}}-{{27\,a^2\,d-9\,a \,b\,c+2\,b^3}\over{54\,a^3}}\right)^{{{1}\over{3}}}\\ -{{\left(-{{ \sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)\,\left(3\,a\,c-b^2\right) }\over{9\,a^2\,\left({{\sqrt{27\,a^2\,d^2+\left(4\,b^3-18\,a\,b\,c \right)\,d+4\,a\,c^3-b^2\,c^2}}\over{2\,3^{{{3}\over{2}}}\,a^2}}-{{ 27\,a^2\,d-9\,a\,b\,c+2\,b^3}\over{54\,a^3}}\right)^{{{1}\over{3}}} }}-{{b}\over{3\,a}} \) \(\displaystyle \\ x=\left(-{{\sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)\, \left({{\sqrt{27\,a^2\,d^2+\left(4\,b^3-18\,a\,b\,c\right)\,d+4\,a\, c^3-b^2\,c^2}}\over{2\,3^{{{3}\over{2}}}\,a^2}}-{{27\,a^2\,d-9\,a\,b \,c+2\,b^3}\over{54\,a^3}}\right)^{{{1}\over{3}}}\\ -{{\left({{\sqrt{3} \,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)\,\left(3\,a\,c-b^2\right)}\over{9 \,a^2\,\left({{\sqrt{27\,a^2\,d^2+\left(4\,b^3-18\,a\,b\,c\right)\,d +4\,a\,c^3-b^2\,c^2}}\over{2\,3^{{{3}\over{2}}}\,a^2}}-{{27\,a^2\,d- 9\,a\,b\,c+2\,b^3}\over{54\,a^3}}\right)^{{{1}\over{3}}}}}-{{b }\over{3\,a}} \)
みるだけの価値はありますが、実際に数値を当てはめようなんて気はさらさら起きません。
複雑すぎですが、ちゃんと解は3個ありますよ。
この公式に、\(\displaystyle a=1,b=-4,c=-17,d=60\)
を代入しすると、 \(\displaystyle x^3-4x^2-17x+60=0\) の解が得られるわけです。
代入するなんて気が遠くなりますが、ここまで来たからにはと思い、やってみました。
以下が、代入した結果です。
\(\displaystyle x= \left(7\,\sqrt{3}\,i-{{440}\over{27}}\right)^{{{1}\over{3}}}+{{67 }\over{9\,\left(7\,\sqrt{3}\,i-{{440}\over{27}}\right)^{{{1}\over{3 }}}}}+{{4}\over{3}} \) \(\displaystyle x=\left({{\sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)\,\left(7\, \sqrt{3}\,i-{{440}\over{27}}\right)^{{{1}\over{3}}}+{{67\,\left(-{{ \sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)}\over{9\,\left(7\,\sqrt{3 }\,i-{{440}\over{27}}\right)^{{{1}\over{3}}}}}+{{4}\over{3}} \) \(\displaystyle x=\left(-{{\sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)\, \left(7\,\sqrt{3}\,i-{{440}\over{27}}\right)^{{{1}\over{3}}}+{{67\, \left({{\sqrt{3}\,i}\over{2}}-{{1}\over{2}}\right)}\over{9\,\left(7 \,\sqrt{3}\,i-{{440}\over{27}}\right)^{{{1}\over{3}}}}}+{{4}\over{3 }} \)
どっひゃー!!!
文字が数値に変わっていくらか簡略化されますが、 これ以上どうやって簡単にしろという感じです。
しかし、有理化などやって、うまく計算すると、
\(\displaystyle x=-4,3,5\)が得られるはずです。
不思議な気もしますが、これが計算すると整数になるのですよ。
もうちょっとだけ計算してみました。
\(\displaystyle x={{\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440\right)^{{{2 }\over{3}}}+4\,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440\right)^{{{1}\over{3 }}}+67}\over{3\,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440\right)^{{{1}\over{ 3}}}}}\) \(\displaystyle x={{\left(\sqrt{3}\,i- 1\right)\,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440\right)^{{{2}\over{3}}}+8 \,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440\right)^{{{1}\over{3}}}-67\, \sqrt{3}\,i-67}\over{6\,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440\right)^{{{ 1}\over{3}}}}} \) \(\displaystyle x=-{{\left(\sqrt{3}\,i+1\right)\,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}} \,i-440\right)^{{{2}\over{3}}}-8\,\left(7\,3^{{{7}\over{2}}}\,i-440 \right)^{{{1}\over{3}}}-67\,\sqrt{3}\,i+67}\over{6\,\left(7\,3^{{{7 }\over{2}}}\,i-440\right)^{{{1}\over{3}}}}} \)
1/3乗の部分をなんとかしないと、これ以上すすみませんね。
ギブアップです。
ものすごい計算テクニックを使わないとこの計算はできません。
この計算問題ができる高校生は、一握りだと思います。
なんとか頑張って途中までは計算しましたが、
これで、三次方程式の解の公式が実務的でないことが実感できたでしょうか。
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